業務改善のみせ方(その2)

 前回、業務改善のみせ方として、「見せ方」「診せ方」「魅せ方」について述べました。その中で特に、改善状況がわかるものとして「指標」を取りあげ、みんなが見たいと思う工夫をしましょうという話をしました。

 今回は、その指標のみせ方の工夫として、指標のまとめ方についてお話します。

 

   まとめ方に対する基本的な考え方としては、指標をはかったままにせず、何らかの加工(換算、比較、集計、関連等)をほどこすということです。もちろん、そのままみせるのが分かり易いものもありますが、大抵の場合は指標の量が多すぎて、全体的な傾向が見渡せません。そこで、加工により全体像を把握し、業務や他指標との関連を理解しやすくするのです。

 まず、分かりやすい例として、金額に換算するという方法があります。具体的には、ABC(活動基準原価計算)という手法をもちい、単価×時間×指標=金額という換算をします。漠然と作業時間が1時間減ったというよりも、金額で5000円浮いたのほうがインパクトがあります

 ただ、ABCを行うには、その作業時間にかかわる単価をきちんと把握せねばなりません。単純作業なら簡単ですが、複数の人間や機械材料等が組み合わさると、途端に把握が困難になります。この場合は、その作業を人・もの・機械で分類し、作業手順書を用いて流れをまとめておくことが重要です。業務改善を行っているのならば、当然あるべきものなのですが、漠然と業務改善を行っている場合、この作業がおろそかにされがちです。

 次に比較があります。目標時間に対して、あと何時間縮めればいいのか(引き算)や、全体に占める割合としての%表示など、簡単な計算ですが、指標そのままより格段にわかりやすくなるはずです。この際重要なのは、基準となる目標時間や過去の作業時間などの記録・設定です。業務改善をしても効果が見えないという場合に、過去の記録をとらずにはじめているケースが多いのです。比較対象がなくても業務改善はできますが、改善効果を知るためには過去の実績をきちんと把握しておくことは必須です。 

 また、ベンチマーキングといって、他社や業界内の基準との比較も有効です。ただし、残念ながら、これをみれば一目瞭然といった資料があるわけではないので、国などの調査資料をもとに目安をつくるか、民間調査会社に依頼することになります。

 

 次に、グループ化や集計、上位だけ下位だけなどの取捨選択があります。顧客満足度やヒヤリハットなどの指標をとるために、アンケートを実施することがありますね。これらのアンケートは、できるだけ簡易に集計できるよう、自由形式でなく選択式のものを用いるケースが多いのですが、できるだけ多くの意見を拾おうとすると、設問数が多くなりがちです。ゆえに、指標が増えすぎて全体像が見えにくくなってしまうのです。

 このような場合、いくつかの大きなグループに分けて別の指標に替える、希望の多かったものだけに絞る等で、全体像を把握しやすくすることが大切です。また、集計時には、指標間での重要度を勘案し、ただ足し算するだけでなく重み付けをすることも、時には必要でしょう。絞り込む場合は、結果の並び替え(昇順、降順)で順位付けをしたり、グループ化して代表項目を抜き出したりします。そうして、たとえば「売上高の80%は全体の20%の顧客によるものである」(=パレートの法則)等が見つかれば、しめたもの。ただし、絞込みの範囲によっては、大事な項目が抜け落ちる可能性もあり、定期的な見直しが大切です。

 最後に関連付けです。仕事時間と売上といった簡単なものはもちろん、朝礼での挨拶状況と事故、顧客の滞在時間と売上等、関連性がなさそうでないあるものを見出します。つまり、簡単で記録しやすい指標から大きな指標を導き出すことができるのです。この相関性を確認するには、統計学で様々な手法がありますが、大切なのは、関連しているかどうかの可能性を見出すことです。これは日ごろから仮説検証を行いながら、業務を進めていかないとなかなか見つけられません。常に前向きな疑問を持ち、解決の糸口を探求することが、関連性をみつける基本となります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする