高速モバイル通信

 今回は現場のネット環境のための高速モバイル通信についてお話しします。

 7年前に現場のインターネット環境についてお話しした際はあると便利ですよといった状態でしたが、今ではメールやネット閲覧はもちろん、本社や拠点事務所とのファイル共有、ネットを利用した社内システムのために現場でのネット環境は欠かせないものになりました。

 また、昨年度から本格化してきた公共工事における発注者との情報共有もネット環境なしにはなりたちません。現在は大きな現場中心ですが、小さな現場にもいずれは求められてきます。そうなるとネット環境は現場運営のために必須ということになるのです。

 大きな現場や長期の現場は光もしくはADSLの固定回線を引けばいいですが、小規模現場や短期間の現場では固定回線を設置するわけにはいきません。そこで登場するのが高速モバイル通信です。

 高速モバイル通信とは、主に携帯電話会社がデータ通信専用で提供している移動回線(つまり無線)の高速通信です。スピードは提供される回線によって異なりますが、一昔前のISDNよりはずっと早く、場所によってはADSL回線より速いスピードでネット環境を実現することができます。しかも設置手間がありませんので短期間で環境を構築できるだけでなく、撤去移動も簡単です。

 ハードウェアとしてはほとんどどこも同じでモバイルルーターと呼ばれる装置を使います。モバイルルーターはインターネットへ接続するモデム機能と無線LANの親機としてのアクセスポイント機能を有しています。インターネット接続も自動的に行われるようになっているため昔だったら手間暇かけたプロバイダーごとの接続設定も不要です。電源を入れるだけで簡単にネット環境を構築することができます。しかも無線LANの接続ができる端末さえあれば、複数台の同時接続も簡単にできるので、数人の現場であれば追加のハードウェアは全く不要でネット環境ができます。

 欠点としては、10台未満の台数しか接続できないことと無線LANの性能も弱いため、10m以内程度しか無線LANの電波が届かないことです。しかし、小規模現場ではほとんどがこの条件内ですむことが多いので困ることはほとんどないと思います。

 ほかに困る点を挙げるとするとプリンターやNAS(LAN型ハードディスク)といった共有したい周辺機器だと思います。しかし、最近のインクジェットプリンターは無線化が進んでいますし、レーザプリンターやNASも有線LANを無線LANに変える「イーサネットコンバータ」を使うことで無線化することができます。こうすることで事務所内のLAN配線をすべてなくすことも可能です。

 現場事務所内でLAN配線がなくなるのは設置手間がなくなるだけでなく、不用意に足を引っ掛けなくて済むのも助かります。ただし、上記の接続台数に無線化したプリンター等も含まれるため、パソコンの接続台数が減ることを忘れないようにしましょう。

 別の方法としては、1台のパソコンをサーバーに見立てて、プリンターやハードディスクを共有できるように設定することもできます。写真管理ソフトのようにサーバーが必要なソフトがあれば、そのパソコンを利用するのもいいです。

 無線LANならではの注意点としては、以前もお話ししたと思いますが通信の暗号化を行うことです。暗号化を行わないと通信が傍受されるだけでなく、アクセスポイントを無断借用されてしまいます。社内システムに侵入されてしまったら大変です。

 通信の暗号化は標準でできるようになっています。一番大切なことは初期設定のパスワードを変更することとゲーム機などセキュリティの低い接続しかできない端末のために用意してある簡易接続を中止することです。今の機種ならばWPA2という規格の設定を選び、WEPは必ずやめるようにしてください。

 とはいえ、先ほどの欠点である無線LANの電波が届く範囲内に関係者以外が立ち入らない現場内事務所ではそのままでもダメというわけではないです。欠点がそのままセキュリティとなっているのです。もちろんマンションの一室を借りているとか公道に接している事務所は上記の設定を必ず行うようにしましょう。

 以前ならば、小規模現場はネット環境をあきらめ、拠点事務所に寄っては処理を行っていましたが、高速モバイル通信のおかげで直行直帰が可能になりました。少しでもおうちに帰る時間が早くなるのはありがたいですね。

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