現場でのタブレット端末活用(その5)

 前回に続き、現場でのタブレット端末活用についてお話しします。今回もタブレット端末の環境づくりについてです。

(1) 共有フォルダ(オンラインストレージ)

 通信環境が整った状態で次に必要な環境は共有フォルダです。どこからでもアクセスできることも重要ですが、通信環境が悪い状態でも作業に支障がないようにすることができることが重要です。

 Windows XP時代からオフラインファイルという設定で、サーバー側のファイルをクライアント側のパソコンにキャッシュしておき、ネットワークがつながっていない状態でも作業ができる仕組みがあります。

 しかし、OSがWindows でないタブレット端末ではこれは使えません。そこで登場するのがオンラインストレージサービスです。通常のオンラインストレージサービスはインターネット上にファイルを置いて共有できるような仕組みになっていますが、DropBox に代表されるローカルフォルダ同期機能がついているサービスはローカルフォルダにファイルコピーを置いて定期的に同期をとる仕組みをもっています。

 つまり、作業者はネットワークが切断しているか接続しているか気にせずにファイルを編集ができるのです。さらに多くのサービスはiOSやAndroid用のアプリを提供していますので、導入することで簡単にファイルを共有することができます。

 問題は、編集ソフトがWindows 上と同じものをつかうことができない点です。文書は図形などの特殊な情報、表計算は複雑な関数やマクロ等がある場合は、共有のために簡易なものに置換える必要があります。また、大きなファイルもタブレット側が苦手な場合もあるので、できるだけ単一目的のファイルにして、ひとつずつのファイルサイズを小さくすることをおすすめします。

(2) セキュリティ

 セキュリティは大きく3つに分かれます。ひとつは無線LANを含む通信環境の暗号化です。特に無線LANはできるだけ強固なものを選ぶことをおすすめします。無線LANルーターの初期設定では接続が容易な環境が残っている場合があるのでできれば削除して、きちんと設定しなおしてください。

 2つめは、ファイルやフォルダの権限管理です。先ほどのオンラインストレージも安易に同じID、パスワードで共有せずにそれぞれ独立したID、パスワードを設定したうえで、共有フォルダに必要なメンバーだけで閲覧編集できる設定を行うことが大切です。ファイルについても社外秘のようなものはパスワード設定を行い管理することが大切です。

 3つめは、タブレット端末自体のセキュリティです。Android端末ならウィルス対策ソフトはもちろんですが、業務で使うのであれば、パスワードによる画面ロックがかかるようにしましょう。また、紛失に備えてモバイル端末管理ソフトの導入も有効です。費用がそれなりにかかるので、業務内容や漏えいリスク等を踏まえて検討してください。

(3) 私有端末の社内ルール

 環境とは少しずれるかもしれませんが、スマートフォンを私有でもっているとき、場所によってはそのスマートフォンのテザリング機能を使うことが望ましいことがあるかもしれません。現場の場合は特に通信環境に制約があることが多いため、接続手段を複数持っておく事は環境整備の点からも重要です。

 しかし、オプションとなっているテザリングを業務のために有効にし料金を負担することに抵抗のある社員は少なくないと思います。また、タブレット端末そのものを所有している場合の対応もあります。

 このような私有端末の業務使用に対して、コスト負担はもちろんのこと、使用についても社内ルールを作っておくことが重要です。BYOD(Bring Your Own Device:私的端末利用)というキーワードで事例が紹介されていますので、参考にして基本ルールをつくることをおすすめします。

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