原価管理の基本(その8)

 前回は勘定科目のお話をしました。今日は原価計算基準からちょっと脱線して損益分岐点のお話をします。

6.損益分岐点

 みなさん、損益分岐点という言葉をご存知ですか?漢字からも想像がつくとは思いますが、損を出すか利益を出すかの分岐点、すなわち、「儲け」が0となる売上ということです。正式には金額で出す場合は損益分岐点売上高、数量で出す場合は損益分岐点売上数量といいます。

 まずは費用分類です。最大のポイントにもなりますが、前回までに分けた材料費、労務費、経費を売上に比例する変動費と影響を受けない固定費に分けます。厳密に比例しないこともあると思いますがおおよそ材料費と直接労務費、直接経費は変動費、間接労務費と間接経費を固定費に分けることが多いです。

 次にある売上高の変動費、固定費それぞれを合計します。あとは下記の算定式で求めることができます。

 損益分岐点 = 固定費 ÷{1?(変動費÷売上高)}

この式は下記の流れで導かれます。

利益=売上高?変動費?固定費
変動費率=変動費÷売上高 ⇒ 変動費=売上高×変動費率

より

利益=売上高?売上高×変動費率?固定費

ここで利益0の時が損益分岐点なので、利益を0にして売上高で解くと

売上高=固定費÷(1?変動費率)

となり、変動費率を変動費÷売上高にすると最初の式になります

ポイントとして売上高0の時は変動費は0ということです。費用の変動費と固定費の分類がうまくできない場合は、複数の売上時の費用から変動費率(費用?売上高のグラフを書いたときに傾きにあたる)を求め、逆算で固定費を求める(グラフではY切片にあたる)ことで比較的精度のよい損益分岐点が算定できます。

 さて、損益分岐点売上高を求めた後はどうすればいいでしょう。もし、赤字(現状の売上高が損益分岐点売上高より低い)だったとすると、売上UPが真っ先に思いつくことです。しかし、それだけが赤字解消ではないということです。

 ひとつは固定費を下げるということです。具体的には本社スタッフの人件費を削減したり、共通費を削減することによって、そもそもの損益分岐点売上高を小さくすることができます。

 もう一つは変動費率を上げるということです。具体的にはロスをなくしたり、作業効率をあげることによって、こちらも損益分岐点売上高を小さくすることができます。

 損益分岐点売上高を出さないとついつい売上だけが目標値のようになって、コスト改善や粗利率改善が置き去りにされがちです。また、本社スタッフが現場ラインへのかかわりを希薄に感じることもあります。しかし、損益分岐点を算出することで、赤字を脱出することや利益をよりだすためには売上だけではないことが理解できるようになります。また、売上欲しさにお金をかけて販促をすることがよくありますがその分固定費があがることになり、損益分岐点売上高は高くなることも感じることができるはずです。

 漠然と赤字解消を売上だけに求めているならばぜひ損益分岐点算定を行ってみてください。

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