前回、システム運用の問題点をお話ししました。今回からそれらを踏まえたシステム運用のポイントについてお話しします。
1.システムの寿命を設定する
システム運用を考えるうえで最初に検討すべきことはシステムの寿命です。別の言い方をすると運用期間を決めるということです。
もちろん、システム開発をした企業としてはできるだけ長く使いたいと思いますが、無理矢理システムを使うことで社員の負担や業務時間が増えるだけでなく、セキュリティ的に問題になることも少なくありません。
とはいえ、どのような制約条件がシステムの寿命を決めるのかピンとこない方もいらっしゃると思います。最低限押さえてほしいポイントを5つお話しします。
(1) ハードウェアの制約
使用頻度や使用環境にもよりけりですが、意外と一番寿命が短いのがハードウェアだと思います。もちろん、丁寧に使えば10年でも使えるかもしれませんが、ハードディスクが5年も持たずにダメになったという例もありました。(建設業のほこりっぽい環境のせいだと思いますが・・・)
もちろん、交換部品や代替機種があれば、システムそのものの寿命に影響することはありません。しかし、日進月歩のIT業界で部品が入手しづらくなることはあります。また、交換ノウハウが企業にないためにシステムが使えなくなることもゼロではありません。既存の会社のパソコンに合わせて古い環境でつくったために3年ももたなかったという例もありました。
制約条件にならないよう、ハードウェアの新規導入、保守契約や汎用的な機種の使用を忘れないでください。
(2) OSの制約
Windows XPの話に代表されるように基本ソフトであるOSのサポート期限がシステムの寿命になることはとても多いです。特に出たばかりの新OSは開発実績が少ないため、ついひとつ前のOSで開発した結果、システム寿命を縮めている話をよく聞きます。
できるだけOSへの依存度を減らす開発ができればいいのですがなかなかできないのが実情です。許せる限り最新のOSでの開発をおこなうことで寿命を延ばしましょう。
(3) ソフトウェアの制約
市販ソフトを利用する場合は、(1)と(2)の制約を乗り越えて、バージョンアップで対応できる場合もありますが、自社開発の場合だとそこが難しいです。
また、開発したソフトに利用されているミドルウェア(OSとソフトをつなぐ中間的なソフト)のサポート切れがあります。その開発会社の倒産や事業廃止などによる原因が主ですがセキュリティ対策がなくなることで利用を断念せざる得ないケースもあります。
このあたりは予測はできないとはいえ、できるだけ著名で大手のものを高価でも利用することが制約を緩めるポイントになります。
(4) 業務の制約
上記まではシステム内の話ですが、ここからはシステムの外の話になります。設備が変わった、業態がかわった、手順が変わった等の業務の変更にシステムが対応できないことはよくあります。
基幹業務ソフトといわれているものは平均13.8年の寿命があるそうですが、業務にそぐ合わないのを無理に使うのは最終的には損失になります。
このような場合は費用対効果を考え、延命措置をほどこすか、新しいシステムにするかを判断することが大切です。また、システムを小さなシステムに分割し、修正箇所を最小限にするような仕組みが導入できるとなおいいです。
(5) 社会条件の制約
今回の消費税がこれに当たります。17年間も変わっていなかったために、消費税を変更する仕組みを自社システムがもっていなかったケースが多くあります。特に建設業は経過措置の影響をまともに受けるために苦労している話をよく聞きます。
法律の影響をあまり受けない税抜の原価管理や数量だけの生産管理システムならまだいいですが、そうでない場合はできるだけ可能性がある社会条件の変更はシステム内で変更できる仕組みを持つようにして寿命をのばすようにしましょう。
上記のポイントを押さえることでできるだけ長く使えるシステムを使うという視点もありますが、開発費用を抑えて、短期間で回収し、次のシステムに備えるという考え方もあります。昨今の社会情勢や業務整備が不十分だけどシステムが必要な場合は有効だと思います。長期間利用を目的としても見直し時期を設定し、利用状況を確認することは忘れないでください。
いずれにしても、システムの寿命を想定し、システムの運用期間を設定しましょう。