前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回は在庫品に関するコストについてです。
在庫に関するコストというと在庫置場となる倉庫費用というのがすぐに思いつくのではないでしょうか。しかし、細かく考えるとそれ以外にもいろいろ費用が掛かっていることがわかってきます。上記も含め、具体的にお話しします。
(1) 運搬具・建物等の関連経費
まずは、倉庫に関する設備費用ですね。具体的にいうと倉庫として使う建物、材料・製品等を置く棚や容器、照明器具や冷暖房器具等もあります。また、製品を倉庫に運ぶための運搬具の費用もあります。他の業務と兼用であれば問題ありませんが、ある程度規模になると専用になることが多いので経費としては見ておく必要があるでしょう。
(2) 在庫付帯作業に伴う労務費
在庫するために発生する人件費です。具体的には製品の場合
・運搬・荷積(工場から置き場へ)
・梱包・配送(置き場から現場へ)
・事務処理、在庫管理
などがあります。倉庫の規模にもよりけりですが、常駐・専任となるとまるまる一人分の人件費がかかるということです。また、一時的なものかもしれませんが、定期的に行われる棚卸業務の際の人件費も在庫ゆえのお金です。
(3) 維持費(養生材料と手間)
材料・商品・製品が放置しておいても問題ないモノであればいいですが、ホコリがかからないように養生ためのカバーやブルーシート、それを実施するための労務費もそれなりにかかります。保管対象によっては定期的な換気や保湿が必要なものもあり、その行為に対する費用も含まれます。
(4) 在庫資金に伴う金利
在庫はすぐに販売せずに自社に保管しているものです。そのためにすぐに換金できない状態です。つまり、そこにある製品・商品・材料はそれを事前購入・生産するための費用が掛かっているということです。
「最終的には販売され換金されるからいいんじゃないの」と思うのは世の中に自社ですべての資金を賄っている場合です。借金をして資金を確保すれば、その金利は余分に費用としてかかります。この金額は在庫金額が大きいほど無視できない金額になります。
(5) 棚卸減耗費、商品評価損
在庫したものがすべて使うことができれば問題ないのですが、運搬時に消失したり、破損したりということは皆無ではありません。また、長期間保存していたことにより価値の低下もあります。
前者のような場合は、棚卸減耗費という項目で、後者の場合は商品評価損という項目で金額を把握します。在庫した故に発生した費用です。
(6) 陳腐化による廃却手間および処分費用
評価損よりさらに進んで、廃却することになった在庫品は廃却するための手間(労務費、経費)とそれを外部で処分してもらう費用が発生します。陳腐化というのは在庫品の価値が下がってしまうことですが、いわゆるさびや汚れ、傷等による物理的陳腐化とは別に仕様変更、法律変更による社会的陳腐化というものがあります。前者は長期間保有や維持管理不足によるものが大きいですが、後者は突然の場合もあり、在庫保有量が多い場合は損害も少なくありません。
(7) 廃材利用の加工費
(6)に付随するものですが、廃材となったものを加工して付加価値を与える場合にその加工費というのも費用として考える必要があります。もちろん、付加価値によって、廃材からいくらかの収入が得られることもありますが、加工してやっと処分費が不要になったという例も少なくありません。
このように在庫をすることで様々な費用が掛かっているということです。逆に在庫量を減らすことができると上記の費用も減るので、効果は在庫金額以上にあるのです。