在庫管理(その3)

 前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回から在庫が増える理由についてお話しします。この理由が対策のきっかけになるので何回かに分けていろいろな理由をお話しします。

 建設業に限らず、製造業でも小売業でも在庫は少ないより多い場合の対応についての相談がでます。少ない場合はその少ないとわかっている材料、製品、商品を購入もしくは生産すればいいので対策が明確にしやすいです。しかし、多い場合はその理由が多岐にわたるため理由(原因)をきちんと把握してから対策を立てないと失敗します。各視点ごとに理由をお話しします。

1.販売(営業)側での理由

・多品種保有で売れ筋を確保したい。
 お客様のニーズにできるだけこたえるために多品種でそれなりの量を在庫したいために増えることがあります。ニーズにこたえるということはいいことですが、本当のニーズを把握しているかどうかはかなり疑問で「いろいろ用意しておけばどれか売れ筋になるだろう」といった思いのほうが強い気がします。

・少量出荷対応で発注者ニーズにこたえたい。
 少量の出荷に対応できるように梱包が小さくなり数えにくくなることや少量という単位のない数量をいつでも出荷できるように多めに作ることにより増える感じです。もちろん上記の多品種と組み合わせると複雑さは増すのはいうまでもありません。

・緊急な発注依頼(短納期)にも、もれなく対応したい。
 少量とつながる話です。少量出荷ということはすぐに使い切ってしまうので次の出荷までが当然短くなります。結果として出荷側はいつでも出荷できるように在庫を多くもつようになります。

・品切れによる販売ロスを少なくしたい。
 上3つの共通ですが、言われたときにありませんではせっかくの販売チャンスを失うので、在庫を持っておきたいという理由です。

・販売計画がないもしくはできない。
 本来はどれくらい売れば、自社が赤字にならなくて済むかを考え、過去実績や将来予測から販売すべき数量を計画するべきなのですが予測精度が低いこと(お客様の好みはすぐ変わると言い換えていますが・・・)を理由に計画がないもしくはつくらないため、多めに在庫をもってしまうというケースです。

2.生産(工場)側での理由

・生産計画がないもしくはできない
 出荷の予測精度が低いとか計画の変更が多くて計画を作ってもどうせ守れないとかの理由で多めに作っておけばいいだろうというパターンです。

・生産能力のアンバランス(繁忙期、閑散期)をなくしたい。
 この理由が結構多いです。もちろん、平準化することで繁忙期の残業を減らせることはいいことなので、閑散期の在庫の増加はやむを得ないとは思うのですが、なぜか繁忙期が過ぎても残っていることが少なくないです。

・購入ロット・生産ロットで生産したい。
 100枚単位、1000個単位など生産しやすい数量があります。その数量でやると生産効率があがるのでいいという理由です。これも悪くはないと思いますが、本当に単位が小さくならないのかその量でも売り切れるのかといった検証がありません。特に材料側の都合(購入ロット)は見直しをしたことないケースが多いです。

・設備故障で生産できなくなるのを避けたい。
 もしもの時を考えるのは大事です。そのために余分に作るということも対策の一つです。ただし、設備故障が起きないようにする努力を抜きにして、作るのは問題です。

・段取り替えを少なくしたい。
 多機能な生産設備は部分的な設定や器具の変更でいろいろな製品を作れます。逆に製品ごとに設定を変えることが必要になります。この準備時間(段取替え)を少なくできると作業効率があがるのですが切替がない分、一回の生産量が多くなってしまうというのもまた事実です。

・品質上問題があり、良品不足をなくしたい。
 スキル不足や性能不足で不良品がでることを予期し、あらかじめ多めに作っておき、納品に必要な量を確保するという発想です。ただ、問題も特定できておらず、良品率も把握していないことが多いので、たいてい作りすぎています。

・原材料や部品がなくて生産できなくなるのを避けたい。
 これは生産に必要な材料・部品に関してですが、計画がなかったり、飛び込みが多かったりすると不足が心配なので多めに購入して在庫しているというケースです。材料注文後の納期が短ければそのような心配も減るはずなのですがそのことにはノータッチになっています。

 このように単に在庫が多いという理由といっても様々な背景があることがわかると思います。次回ももう少しほかの理由も話します。

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