前回は、電子納品のまとめとして、どのようなものが再利用しやすいかをお話しました。具体的には、
・施工計画書
・図面
・実施工程表
・打合記録
の4点でしたが、これらを作成・利用するための手順などを更に詳しく見ていくことにします。
まず、今回は作成について。
前回お話したように、社内ルール制定が必要です。考えられる主なルールをあげると、以下のようなものです。
・書類・・・基本書式(文字サイズ、行数、桁数、余白)
・図面・・・画層名や線種、線の太さ、縮尺、枠
・ファイル・・・ファイル命名ルール、フォルダ命名ルール
細かい基準を決めるとなると、どれもなかなか大変ですね。
参考になるものとしては、図面やファイル・フォルダの命名であれば国土交通省の「電子納品に関する要領・基準」類があります。(ただ、これに従うと、アルファベットで命名することになります。わかりやすい日本語に変えるだけでもかなり違うと思います。)
また、図面の細かいルール(線種、線の太さ、縮尺、枠)等は、国土交通省の「CAD製図基準」をもととして、従来の「土木製図基準」等を参考にして作るとよいでしょう。
書類の基本書式が一番厄介です。なぜなら、参考になるものがないのです。
先ほどの電子納品に関する基準はファイル名までにとどまり、中身まで踏み込んでいません。また、各種共通仕様書についても、目次例や主な図表はのっていますが、それ以外の多くは受注者に任されているようです。まず、社内用として共通書式を策定し、自社の得意先を考慮してそれぞれにアレンジするという手順が最善でしょう。
図面・ファイル・書類書式など、どれについても社内統一のテンプレートを用意しておくのが大切です。
(テンプレートとは、そもそも矯正器具や定規の意ですが、要は書類・図面のサンプル集と思ってください。)
あらかじめ、主な画層やペン設定、枠が入った白紙のCADファイル、一定のスタイルに設定された白紙の文書ファイルなどを現場の着工時に配布します。それを元に書類作成できるようにしておくと、ルールの浸透が早いでしょう。その都度一から書類・図面を作っていては、文面でいくら上記のような社内ルールをうたっても、守られにくいと思われます。
基本工種図面集や主な施工手順書等も、サンプルとして整備しておくと確実に利用されていくでしょう。
テンプレート作りといっても最初は大変ですが、徐々にデータが集まってくるとそれなりに修正もできます。
大切なことは、一回で決めるのではなく、数ヶ月もしくは1年程度時間をかけて、みなの使いやすいテンプレート作りができるような体制を構築することです。ITの得手なメンバーを集めて、短期間でテンプレート作りをする話をよく聞きますが、得手な人の作ったものが使いやすいとは限りません。どんな状態であっても、どうにかして出来てしまうからです。大切なのは、不得手な人が使いやすいものかどうかであり、実際に不得手な人にテンプレートを使ってもらい改善していくというキャッチボールのような作業が必要となります。そうしなかったために、結局は企画倒れとなった話を聞きます。この点に充分留意して作業を進めてください。
次回は、再利用しやすくするための管理方法についてお話します。