データ・情報・知識・知恵

 今回の話は、少し難しいかもしれませんが、会社を存続するためには非常に大切なことです。よろしくお願いします。

 以前、OJTの話をしたときに「暗黙知」と「形式知」の話をしました。これはハンガリーの哲学者マイケル・ポランニーが提示した言葉ですが、「暗黙知」とは験や勘に基づく知識のことで、言葉などで表現が難しいもの。「形式知」は文章化、図表化などによって説明、表現できる知識を指します。

 建設業に限らず多くの経験産業では、暗黙知を形式知にする試みがなされてはいるものの、うまくいっていません。特に日本では、「あうんの呼吸」「師匠の技は盗め」的な部分が根強く、形式知を嫌う風潮も少なくありません。

 

そこで、ISO9000シリーズを代表とする体系的な管理基準をベースとしてルール化を試みている企業もありますが、やはりうまくいかないことが多ようです。なぜでしょう?

 思うに、データ・情報・知識・知恵をきちんと理解していないからではないでしょうか。これらが曖昧であるために、無駄な労力を費やして書類を作成している気がします。

 データとは、辞書的に言うと「物事の推論の基礎となる事実」です。理想や夢が入ったものは「データ」ではありません。そして、データが意味を持つと「情報」になります。32度という数値だけではデータですが、「明日の最高気温は32度」となると情報です。意味を持たないデータだけをいくら集めてもだめなのです。

 管理を厳しくしようと、様々な数値指標で報告をさせたり、帳票を増やして安心している企業があります。社員が苦心して作成した資料が、結局利用されずに倉庫の隅に追いやられています。こうなってしまうのは、情報の意味をちゃんと理解していないからです。データを集めるのは簡単ですが、情報として生かすのは易しくありません。ITが、Information Technologyとして本当の価値を生み出すのは、意味を持つデータを取り扱ったときです。ここを理解しなければ、無駄な投資となってしまうことを自覚しましょう。

 知識とは、情報と情報をある因果関係で結んだものです。そして、知恵は、知識を元に推論し得られたものです。例えば、「雨雲が大きくなれば雨が降る」は知識ですが、「雨雲が大きくなったら、雨が降る前に傘をもっていく」のは知恵です。「高所作業では転落事故が多い」は知識で、「予め安全帯をしたり、転落しような隅には寄らない」は知恵です。

 データはData
 情 報はInformation
 知 識はKnowledge
 知 恵はWisdom

英語では上記のように対応しますが、どうも日本語とは意味が微妙に異なるようです。

 データを集めて、社員が有効に利用できる情報を構築し、それが仕事に使える知識となり、会社にとっての財産である知恵が生まれる。

 知恵は、他社との差異化を図るために重要なものです。しかし、漠然とわかってはいても、それを実践するための環境を整えていないのが今の日本企業の現状でしょう。

 簡単なことではありませんし、短期間で出来ることでもありませんが、まずは無駄なデータ収集をやめ、有効性のある情報が作り出せるように社内環境を見直してみましょう。

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