ファイリングのポイント(その3)

 前回、基本的なルールは説明しましたので、今回は補足的なお話をします。

1.書類の保存期間

 ファイリングで一番の問題はこの保存期間いわゆる書類の寿命です。いくつかの書類については、法的に保存期間が決められています。つまり、法律上、その期間は保存することが義務付けられているのです。具体的に言うと

◆ 10年間保存
・商業帳簿、契約書・・・商法
・完成図、打合簿、施工体系図・・・建設業法施行規則
◆ 7年間保存
・注文書、領収書、請求書・・・法人税法と所得税法の施行規則
・源泉徴収簿・・・国税通則法
◆ 5年保存
・健康診断結果・・・労働安全衛生法
◆ 3年保存
・賃金台帳、労働者名簿・・・労働基準法
・安全衛生委員会議事録・・・労働安全衛生法

となっています。特に工事関係書類は、2008年より瑕疵期間との連動で10年(従来は5年)となったので、保存すべき書類が大幅に増えます。上記の期間を参考に、適切な保存期間を定めてください。ただし、今後も法律改定などにより、期間が変わる場合があります。年に一度は見直すよう、心がけましょう。倉庫の棚卸しも1年に1回行い、スペース確保も忘れずに。 

2.電子化と紙のファイリング

 瑕疵期間延長による保存期間の延長だけでなく、ISOによって口頭だったものが文書化されるなど、書類は増加傾向にあります。そのため、当然電子化を検討することになります。

 公共事業で行われている電子納品はもちろんのこと、2005年から施行されているe-文書法により、かなりの法的文書が電子化可能になりました。上記の書類も、これで大幅に保存体積を縮小できます。従来、竣工書類は、倉庫を借りたり、重機置場の空きスペースなどを利用して保存することが多かったのですが、その必要がほとんどなくなると思われます。

 もともと電子データだったものだけでなく、スキャンニングして保存したものも、検索キーワードを付与したり、OCRで透明文字を埋め込むことで、従来の紙保存に比べ、格段の検索性が確保されます。自社でスキャニングするのは大変ですが、外部サービスもあるので、要検討ですね。

 ここで、文書を電子化する際の注意点を挙げておきましょう。3万円以上の領収書、契約書(いわゆる印紙をはったもの)や損益計算書などの決算書類は、
紙での保存が義務付けられています。法律に照らし合わせるか、関係官庁に相談することをおすすめします。いっぽう、電子契約法や電子帳簿保存法などに準拠すれば、上記のものも電子化が可能です。これは紙を電子化するのではなく、最初から電子的なやりとりで業務を行うものです。ただし、事前の手続き、申請が必要ですし、システム管理という別の側面も出てきます。会社のIT成熟度やサポートしてくれるベンダーの情報などをよく検討の上、導入してください。

3.書類目録

 さて、保管とは「管理状態を保つ」こと、保存は「ただ在る状態を保つ」ことだそうです。人によっては、「書庫に入っている状態」が保管で、「倉庫に入っている状態」を保存と考えるかもしれません。どちらにせよ、検索できるような仕組みを持って倉庫に入っていれば保管と考えてもよいでしょう。

 以前は、紙の書類目録を保存箱に貼りつけ、現場単位に書類を保存箱に入れました。そして、現場一覧と保存先といった、保存箱一覧を事務所に整備していたと思います。書類を探す場合は、まず該当する現場の保存箱を探して、それから書類目録から該当する書類を見つけるといった流れです。この場合、倉庫に行かないと書類目録を見られない上に、保存箱を1個ずつ見て探すことになり、手間が掛かりました。

 しかし、現在、パソコンで検索できるようにすることはさほど難しくありません。ですから、書類目録ごと事務所のパソコンに入れておけば、「保管」に近い状態となり、保存期間の終わった保存箱が一覧でわかるという仕組みも可能です。大切なのは、書類一覧という目録をきちんと整備し、どの箱に入っているかを明確にしておくことです。これならば、書類自体を電子化が不可能な場合でも、適切に管理できることでしょう。

 せっかくとってある書類です。「保存」ではなく「保管」にしたいものです。

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