前回同様、システム運用のポイントについてお話しします。
3.定期的に運用・仕組みを見直す
世の中は変わります。当初想定していなかった社会環境に会社がおかれることは少なくありません。社内向けシステムは影響を受けにくいですがまったくというわけにはいきません。
とはいえ、システム機能は人間のように臨機応変に対応できません。そのために「運用でカバーしよう」という言葉がよく言われます。
運用といっても、2つに分かれます。データバックアップや不具合修正などシステムそのものの維持をするシステム運用とそれを利用する業務運用です。本来なら双方が変化に対して対応すべきなのですが、なぜかシステム運用を変えることに抵抗を示すケースが多いです。理由としては杓子定規な運用ルールの維持ですが、そもそもは業務あってのシステムなのです。そこが抜け落ちている気がすごくします。
このような事態を改善するために定期的(年に1回程度)、運用やシステム利用の仕組みを見直すことを決めておくことです。その見直しの流れについてポイントを説明します。
(1) システムと業務のギャップ確認
まずは、システムと業務のギャップ確認です。もちろん、その前に業務そのものがシステム導入時とどう異なっているかを明確にしておく必要があります。そのうえで、現行のシステムが業務を行う上でどのような課題があるかを確認していきます。入力順序が逆になったとかあるタイミングでの集計が必要とか業務の流れをもとに検証していきましょう。
この際に最初はユーザー側メンバーで検証を行った後、システム側運用者がそれを確認するというスタイルでいきましょう。システム側が主導するとどうしてもシステムに都合のいい流れを求めることがあります。ただし、システム機能が使いこなせていなかったりちょっとの工夫(手順の入替)で済むこともありますので、ユーザーが気づいていない利用方法を提案することは大切です。
(2) 機能利用の教育、手順書整備
次に検証結果で利用頻度の低い機能を使ったり、今までと違う使い方をすることでカバーできる部分があれば、機能の利用方法の教育や手順書の整備を行いましょう。
手順書の見直しの際に元の手順書のOSが古かったり、説明的に不十分だと分かった部分はいっしょに修正しておきましょう。マニュアルや手順書は一度作るとなかなか修正せずに付箋や手書きで応急処置をしていることが多いです。このような見直しと再教育の機会を設けることで新しいユーザーはもちろん古いユーザーでも知らないことを知ってもらえる機会にしましょう。
(3) オフィスソフトでの対応検討、運用方法の見直し
既存機能でカバーができないと判断された業務内容については、エクセルやアクセス等のオフィスソフトでの対応を検討しましょう。いきなりシステムを変更するのではなく、オフィスソフトにする理由は、メンバーにマクロを作れる人がいれば、すぐに対応可能な簡易システムが構築できることと要件定義を詰める際のプロトタイプとして利用できるからです。
それに伴い、運用方法も変わるはずなので、あわせて見直ししましょう。ユーザー側の業務運用はもちろんですが、システム運用も簡易システムを含んだ形で行います。簡易システムの元ファイルやマスターファイルをユーザー任せにしないようにしてください。運用時間やバックアップ対象等も見直してください。
(4) システム機能の追加・修正
最後に簡易的なものでは対応できないと判断された場合はシステム機能を追加したり、既存機能の修正を行うことを検討しましょう。
システム機能の追加・修正は既存機能の利用や運用の見直し、簡易システム利用といったステップの最後にします。安易な追加修正はよくないですが、無理やり使い続けるというのも業務効率が低下してシステム全体の利用率が下がる可能性があります。また、簡易システムも機能追加や修正で容易になるのならば取り組むことをあわせて検討してください。
システム機能追加・修正の際に必ず行うべきなのが費用対効果です。追加・修正に伴うコストとそれによって得られる労務費削減やミス低減による材料費削減といった効果をまとめることです。理想は費用より効果が高いことですが、仮に低くても安心感があがるとか精神的な負担が減るといった定性的な効果があれば実施の検討をしましょう。本来なら運用予算の中にある程度追加・修正の予算をみておけるといいのですが、なかなか昨今の厳しい状況では難しいです。費用対効果を利用して幹部を説得することが有用です。