在庫管理(その4)

 前回に引き続き、在庫管理についてお話をします。今回も在庫が増える理由についてお話しします。今回は倉庫とシステムによる理由です。

3.倉庫側での理由

・倉庫でのルール(基準在庫、3S基準等)がないもしくは守れない
 お客様のニーズに柔軟に対応することは大事なのですが、柔軟すぎて、基準在庫量を決めることができなかったり、品種が多く、量の変化も多すぎて、3S基準をうまく定めることができなかったりといった原因で在庫量が把握しづらくなり、結果として多めに在庫をもっています。

・作業手順、役割分担、受入時間等が守れない
 臨機応変というのは聞こえはいいですが、誰がどこにどの商品・製品を置くかが決められておらず、結果として、複数の場所に同一商品が置かれているなどの問題が発生します。また、受入時間以外に搬入された商品・製品は正規の記録なしに倉庫に置かれているために数量ミスの原因となっています。

・倉庫内の商品表示や位置図等の標識がない
 商品のピックアップミスや無駄な動きによるロスを発生させる原因となっています。場所がわからないなら探す手間を省くという理由で本来あるべきでない出口近くに商品が山積みになるといった現象を起こしています。商品表示や位置図の作成がめんどくさいからといった理由でないことが多いです。

・在庫が分散していて、数量が把握できていない
 上記3つの理由以外にも仮置を勝手に行ったり、一時的な借用と称して無断で持ち出したものを元に戻さなかったりといった理由で同一商品が一つの場所にないことがあります。そのために正確な数量の把握できず、余分な在庫をもつことになっています。

・定期的なチェック機能(棚卸・品質確認)が機能していない
 年に1回の決算棚卸はあるが、それ以外のチェック機能がないか機能していないために何がどこにあるかを誰も把握できていないことが意外とあります。また、品質確認で劣化品の除去も行っていないために劣化品がある程度出ているだろうとの仮説の元に多めに在庫しているケースも少なくありません。

4.システム(IT)側での理由

・入力精度が悪いため不正確
 ITに詳しくない方がこの問題の認識をあまり持っていないことが多いのですが、システムはしょせん道具であり、入力がきちんとできていないとシステムデータが無意味になるですが、どうも正確な数字が入っていると勘違いして、トラブルになっていることがあります。また、精度が悪いとわかってもデータより実在庫が少ないと出荷に支障をきたすため、入力精度をあげるのではなく、多めに作って実在庫がちゃんとあるようにするという本末転倒的な行動に出ている場合もよく見受けられます。

・在庫情報が古い
 入庫時、出庫時のそれぞれのタイミングで処理をせずにまとめて入力している場合にその入力精度が高くても在庫数量が一致しないことがあります。もちろん、システム側がリアルタイムに処理できるものでなくバッチ処理のように終業時にしかできない場合も同様です。

 最近のシステムではあまりないように思われがちですが、バーコード端末で入出庫を管理しながら、そのデータは定期的にパソコンに取り込まなくてはいけないような仕組みだと同様のことが発生します。特に倉庫がシステム環境から離れている場合にきちんと通信環境を整備して、リアルタイムにデータ入出力を行うことが望ましいのですが、システムコスト削減の名目で整備していないケースで起きています。(削るコストを間違えている感じですね)

・システムが業務にあっていない
 システムが古くなっており、業務手順と異なる手続きでしか対応できない場合に、やむを得ず応急処置的な対応で在庫処理を行うことがあります。具体的にいうと、サンプル品の出荷を棚卸差異の仕組みで落としたり、社内販売分を出荷したとして出庫処理をしておきながら、現実は倉庫に入れたままといったような場合です。

 システムが対応していない場合は業務側でカバーすべきなのですが、その手間を惜しんで在庫数量を間違った状態のままにしていることが多いです。

・問題在庫(滞留在庫)がわからない
 これは入出庫を数量だけで管理するシステムで起きることですが仮に入出庫期日を入力できていてもそれをキーに在庫期間が把握できる仕組みがなければ同様です。在庫期間がわからないために、長期間置き去りにされている商品・製品を把握できず、生産したことが適切かどうか生産側が把握できていないことがあります。結果として営業の言いなりで生産し、在庫を多く抱えても「必要なものを作った」といって問題在庫を認識しない状態になります。

 このような理由で在庫が増えていきます。増えることで上記の問題を隠ぺいかすることができます。「在庫があるから今のままでいいよね!」ということがまかり通るのです。

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