電子データ保存ルール

 長期休暇前によく受ける相談に、電子データの保存法つまりバックアップについての質問があります。今回は、この話題について詳しくお話ししましょう。

 

電子データの保存ルールとしては以下のことを考える必要があります。

 ・保存対象
 ・保存媒体
 ・保存方法
 ・保存タイミング
 ・保存期間
 
1.保存対象

 文書共有サーバーをバックアップするのはよく聞きますが、それ以外ではどうでしょうか。例えば、個々人のパソコンに入っているメールアドレスや電子メールは、顧客との打合せ記録として重要です。また、作成途中の文書は、文書共有ではなくマイドキュメントに入れる場合も多いでしょう。つまり、各人のパソコンの中にも、保存対象データがあるということです。とはいえ、やみくもに全部バックアップするのは無駄ですから、以下の3点に絞り込みましょう。

 ・電子メール、メールアドレス
 ・マイドキュメント
 ・お気に入りリンク

なお、ソフトによっては作成ファイルを個々の保存フォルダに保存する場合があります。よって、必ずマイドキュメントに保存するように設定変更が必要です。

2.保存媒体

 代表的なものとしてはMO、DVDがあげられます。DVDは不用意な削除を防ぐためDVD?Rがおすすめです。ただし、後でお話しする日々の「差分バックアップ」は、読み書きが容易であるDVD?RAMなどの方が作業しやすいと思います。容量が多くなる場合には、テープもありますが、バックアップ単位を工事別とし、工事完了後はサーバーから削除するようにすればDVDでも充分対応できるでしょう。

3.保存方法

 まず、バックアップ用のハードディスクを一個用意し、そこに対象となるデータ(文書共有サーバーのデータや個々のパソコンデータ)を一旦コピーします。さらに、DVD?R等にバックアップをとるのが望ましいと思います。というのは、文書共有サーバーのハードディスクがだめになった場合でも、このバックアップ用ハードディスクで代用できるからです。DVD?Rへの直接バックアップに比して、短時間でコピー可能なのもよいですね。

 文書共有サーバーから直接バックアップをとる方法ですと、夜間や休日等に行う必要があります。ハードディスクも安価になっていますから、ぜひバックアップ用ハードディスクをご検討ください。
 最近のNASには、バックアップ用のハードディスクが取付け可能であったり、ミラーリング(最初から2つのハードディスクに同時に書き込む)機能がついていたりします。こういったものを購入すれば、より楽になるはずです。特にミラーリングは、リアルタイムバックアップと言われ、片方が故障してもそのままもう一方が機能するのでとても便利です。

 保存方法には「フルバックアップ」「差分バックアップ」の2種類があります。フルバックアップはその名の通り、全部をバックアップするもので、差分バックアップは前回のバックアップから更新されたぶんだけを保存するものです。
 差分バックアップは、バックアップ時間は短くてすみますが、故障の際には復元に手間と時間がかかります。基本となるフルバックアップに差分バックアップを何回かかけて最新版にする必要があるからなのですが、これを自動的に行ってくれる専用のバックアップソフトがありますので、容量が多くて差分バックアップにせざるを得ない場合は、このソフトの導入を検討してください。そうでなければ、フルバックアップをおすすめします。

4.保存タイミング

 通常、3つの期間に分けてバックアップをとります(=三世代バックアップ)。よく言われる単位は、月・週・日ですが、作業量によっては年・月・週単位でもよいでしょう。現場ならば、竣工時、検査時、月単位でも支障はないかもしれませんが、できるだけ小まめにとることをおすすめします。

5.保存期間

 経理書類は10年、工事書類は瑕疵期間中が基本です。再利用性の高いものは別途整理し保存するのが望ましいでしょう。

 保存期間中は、保存媒体だけでなく、保存媒体の読書き装置も同様に使えるようにしておくことが大切です。もし、保存媒体が発売中止となり、読書き装置の劣化も心配などという場合は、別の媒体へのコピーも検討しておく必要があります。ITの進化は急激で、 10年もあれば媒体も大きく変化します。私自身、フロッピーディスク、MO、CD?R、DVD?Rとバックアップ媒体を変更してきました。現状ではどれも読書きできる環境にありますが、いずれは最新媒体で統一したいと思っています。

 保存ルールで一番大切なのは、バックアップの重要性を認識し、費用と時間をかけるということです。私自身も何度か痛い目(盗難[現場のパソコンがなくなりました]、水難[コーヒーをこぼしました]、雷難[落雷でデータが消えました]、人難[間違って消されてしまいました])に遭い、現在に至っています。みなさんもぜひ転ばぬ先の杖をお持ちいただくことを願います。