社内システムのモダナイゼーション(その7)

今回も引き続き社内システムのモダナイゼーションについてお話しをします。

前回はモダナイゼーションする際の留意点についてお話しをしましたが、今日はIT教育について少しお話しします。

(4) IT教育の仕組みづくり

これは準備というよりは導入後も踏まえた話になりますが、新しいシステムも含めた社内のIT教育の仕組みづくりはモダナイゼーションを成功させるためには不可欠だと思います。必要な理由を4つ紹介します。

1つ目にIT機器の種類が増えました。前回も少しお話ししましたが、昔のシステムのように端末はパソコンだけではありません。スマホやタブレットといったサイズや入力方法、見た目の異なる機器も操作する必要があります。

つまり、単にモダナイゼーションしたシステムの操作だけでなく、当然スマホやタブレットの基本操作、初歩的には電源の入れ方・切り方、アプリの起動・終了、タッチパネルでの入力方法といったことを覚えないといけません。スマホネイティブ世代では当たり前の操作ですが、それ以外の世代には初めての体験です。逆にパソコン世代では当たり前のキーボードのショートカット操作やファンクションキー、右クリックでフォルダ作成といったことができない若い人たちもいます。こちらにも操作指導がいります。

システムを十全に利活用するにはこのIT基礎、システム操作を含む教育の仕組みづくりを行い、個々の社員が不足している知識を把握(スキル評価)し、充足(教育訓練)することが大切なのです。

2つ目に「小中学校でプログラミング教育等を行うからいいんじゃないの」といわれる方もいると思いますが、企業が期待するような内容ではない上に、やっと文部科学省が2025年度をめどに小中学校・高校において1人1台の環境を目指すと話が出たばかりです。つまり、環境すら整っていないのです。企業へITの基本教育が不要の人材が来るのはずっと先です。さらにこの2025年はIT人材の43万人不足すると予測されており取り合いになるのは間違いありません。

社内で継続的に基本的なIT教育をする仕組みはここ10年ぐらいは最低でも必要だと考えます。残念ながら、日本でのこの取り組みは海外に比べて大きく遅れているのが事実です。企業の自助努力なしではIT利活用は向上しません。

10年後、仮に基礎教育を受けてきた人材を確保できたとしても、自社の業務基準・手順を踏まえたシステム操作のためのIT教育はなくなりません。逆にこの教育をおろそかにして、目標設定ないOJT(つまり、担当者に丸投げ)を行ったためにレガシーシステムがブラックボックス化したという事実を忘れないでください。同じ過ちを犯すべきではないでしょう。

3つ目に新人研修の中に自社開発、導入済み業務パッケージに関わらず、自社で業務に使う様々なITシステムの教育を組み込むのは比較的行われていますが、既存社員のフォローアップ教育があるところは少ないです。

毎日行われる操作は忘れることはないですが、たまにしか行わない操作は忘れてしまいます。忘れているがためにせっかくある機能を使わずにムダな手順を踏んでいる企業は少なくありません。フォローアップの仕組みはぜひ検討していただきたい事項です。

4つ目にエクセルやワードの操作もデータの利活用に到底活かせない手書きの清書レベルの段階で留まっている企業も少なくありません。これらのソフトを十分に使いこなせれば、システム投資が少なくなる事実を意外と企業は軽視しています。

ただし、これらの操作習得にはは企業の生きたデータを使ったある程度自社オリジナルの教育を行わないとなかなか身につかないこと覚えておいてください。

支店のない企業に支店別の売上グラフをつくりましょうという一般的なパソコン教育をしてもピンときません。できれば、自社の製品を題材につかった製品別売上グラフのほうが何倍も身につきます。外部教育がダメというわけではありませんが、すべてを外部に依存するのは社員には身につきにくい場合があるということです。

できるだけ自社の生データを使ったほうが実感がわき、操作を身につけたいと思う傾向が多いのは今まで支援を多くの企業でしてきた実感です。

あと、エクセルやワードも少しずつですが進化しています。Office365になってから、昨日できなかったことが今日できるようになったということもゼロではありません。3年に一度の永久ライセンス版ではもっと変わります。新しいバージョンが出るたびに自社に必要な機能かどうかを検証し、必要であれば教育に組み込むことで自社のIT教育も進化させていくことが大切です。

IT機器の多様化、IT人材の不足、フォローアップ研修、エクセル・ワードといった基本的なソフトの習熟。これらを踏まえてIT教育の仕組みづくりがモダナイゼーションを成功させるカギとなると考えます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする