建設業におけるクラウドサービス(その4)

今回も引き続き建設業におけるクラウドサービスについてお話しします。今回は使うときの留意点についてお話しします。

1.参加者管理

まずは、参加者管理です。社内外の情報を取り扱うので誰が使っているのかを把握することが一番大切です。できれば、新規のID登録は特定の部署(情報システム部もしくは総務部)で一元的に実施しましょう。

初期パスワードも発行して、修正は個々の利用者に任せます。ただし、パスワードを忘れた時の対応も一元管理できるようにしておくほうが望ましいです。(パスワード忘れたトラブルが一番多い)

また、退職者やサービス利用から外れた社員のID削除も忘れないようにしましょう。先ほどの特定の部署で総務部(正確にいうと人事情報をもつ部署)を記載したのはその情報を管理しているからです。

始めは有志で使ってもらい、徐々に増えていく感じなので、最初から参加者管理はできないと思いますが、複数の部署にまたがるとか10名以上の規模になったら管理するようにしてください。

2.運用ルール

最初はゆるやかに、利用頻度が上がってきたら細やかに運用ルールを作りましょう。最初から詳細なルールを作ると利用したいという空気がしぼんでしまいます。

最低限の運用ルールとしては、個人情報を掲載しない、IDとパスワードを漏れないようにする、無料の公衆無線LANは極力利用しないといったセキュリティ関係です。セキュリティ面は最初からしっかりしておいたほうがトラブルは少なくて済みます。

クラウドサービスで一番気にするルールは業務時間外での作業をどうするかという問題です。お試し段階であれば、問題ないと思いますが、業務に本格的に利用となるとある程度ルールを作っておかないと「お持ち帰り仕事」の歯止めが利かなくなります。

スケジュール系はいつでもいいとして、オンラインストレージは翌日準備のための参照程度に留めるようにするとか諸事情で現場での作業ができないのあれば、ちゃんと残業として認めるために利用時間を記録するといった対策も考えていく必要があります。

どこでもいつでもできるというのは便利な反面、ついつい時間管理が緩みがちです。その代表的なツールは携帯電話(今はスマホ)で、深夜だろうが休みだろうが関係なくかかってくることに苦労している方も多いのではないでしょうか。クラウドサービスも本格的利用の前に時間外の対応をどうするかは利用者の精神的苦痛を減らすためにも重要だと思います。

早めに帰って家族と一緒に食事をしたのちに軽く仕事の準備をするといったことは個人的にはアリですが、理想は食事の時間前に仕事が終わることです。長労働時間が当たり前と化している建設業界でクラウドサービスがそれを助長するようなことにならないようにしてほしいです。

3.セキュリティ

クラウドサービスを利用するためのセキュリティだけでなく、ウイルス対策や迷惑メール対策と基本的なセキュリティ対策も本格的なサービス利用前にきちんとしておきたいです。どうしても無料サービスを利用するとサービス紹介や広告メールが増えます。その合間を縫って迷惑メールやフィッシングサイトが来ると気づきにくいです。

セキュリティソフトの導入やメールフィルター機能によるメールの振分けなどをできるようにしておくことも気持ちよくサービスを利用するために必要です。クラウドサービスを利用するということはその分、インターネットへの接続時間は長くなり、様々なリスクが高まります。

「だから、使うのはちょっと心配」というのもわかりますが、メールやサイト閲覧だけでも状況は大きく変わりません。いずれにしてもセキュリティ対策はしっかりやっておくべきです。逆にしっかりやっておけばクラウドサービスを利用するかといって身構えてしまうこともないのです。

4.利用情報の発信・共有・活用

クラウドサービスの基本的機能はそのサービスの紹介ページを見たり、利用者の体験ページを見ればわかります。しかし、その会社でどう利用すれば便利かというのはその会社の人でしかわからないことが多いです。

「こんな風な使い方がおすすめ」「こういう利用で○○の作業が楽になった」といった利用方法の情報発信と共有はとても大切です。さらにそれを活用したことで「私もできました」「僕はさらにこういうふうに利用しています」といった声も発案者に届けることも大切です。

理想は掲示板サービスのようなものを利用することですが、そもそもそのサービスを利用すること自体がお試しだったりすることもあります。なので、最初は紙での回覧やみんなが見れるホワイトボードへの書き込みといったところから始めましょう。回覧した内容が自分にとって有益だったら、「いいね」ボタンの代わりに「ニコちゃん」シールのようなものか花丸ハンコのようなもので感謝を表せるようにしましょう。利用情報の発信者を簡単でもいいので評価できることは利用促進の大事な一歩です。サンクスカードと連動させるのもいいと思います。

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