今回も引き続き建設業におけるクラウドサービスについてお話しします。今回はクラウドサービスの利用を続けるためのポイントについてお話しします。
新しい取り組みは、なかなか定着しにくいことがよくあります。圧倒的な利便性や生産向上性があれば、定着しますが、そうでない場合はいつの間にか誰も使わなくなったということが少なくありません。みんな、利用には不満がなかったのになぜか使われなくなったのには理由があります。
クラウドサービスの利用を続けるためにはその理由を取り除くためのいくつかのポイントがあります。
(1) 業務の中に組み込む
これは基本的なことですが、もし対象になる人全員が使えるサービスであれば業務の一部としてサービス利用を組み込んでしまうことが一番です。
クラウドサービスの利用が継続できない理由として、その利用をやらなくても問題ないとかもしくは利用しても正規手順に扱われないといった場合があります。
例えば、日報をクラウドサービスで報告したにも関わらず、詳細も含めて、紙で提出することが義務付けられているといった場合です。結果的に重複作業になるので、義務のほうだけになりますよね。背景にチェックする上司がクラウドサービスの利用が不得手な時にこのようなことが起きます。
併用はダメではないですが、クラウドサービスで提出するだけでもOKだと業務基準を変えるとともに、不得手な上司がチェックできるようにフォローすることが大切です。つまり、上司のチェックの手順も含めて、業務に組み込むことでサービスへの流れができると思います。
(2) 会議体の見直し
情報共有ができるクラウドサービスを利用しているにもかかわらず、その情報をわざわざ会議体で報告せざる得ないような状況になっていると発信する意味を感じなくなり、利用が減っていきます。
例えば、進捗報告を掲示板等で写真付きで載せているにも関わらず、あえて、会議で一つずつ報告させられるのでは困りますよね。会議では困ったことや掲示板に載せていないような相談事を中心に話をしてもらい、進捗報告は見ていることを前提にすることが大切です。
相談事がなければ、会議体の開催間隔を広げて、週から隔週といった感じにしてもいいと思います。もしくは時間を短くする。やはり顔を合わせることでわかることもありますから、間隔は広げたくないという気持ちはよくわかります。とはいえ、話すことは減ったはずです。時間をそのままでダラダラしないようにしましょう。
(3) 働き方の見直し
作業日報や進捗報告等工事状況を写真や文章である程度伝えることができるようになったり、材料や労務の手配も正確に事務所や本社に伝えることができるようになれば、朝晩に必ず事務所によるといった業務の流れも見直せるようになると思います。
特に事務所と現場より、自宅と現場が近い人には寄らないことでできる時間はとても大きいです。「働き方改革」といってもいいかもしれません。
もちろん、全部直行直帰にするのは先ほど書いたように顔合わせができないので、心配も残ります。まずは直行か直帰のどちらかが選べるようになり、週に1回の工程会議には必ず参加するといったような形にすると導入しやすいです。
給与の上昇や休みの増加といった目に見えてわかるメリットに直結しなくても上記のようなことができれば、継続はできると思います。
大切なことは情報を発信・共有することで、関係者全員の時間のムダが減らせることを実感できるような仕組みづくりをITだけでなく業務・基準・体制で作り出すことです。
現場から始めるクラウドサービスの利用ですが、会社全体を巻き込むことが継続の秘訣だと思います。