業務改善のはかりかた

 今まで十数回にわたり、業務改善のはじめかたや育て方、探し方をお話してきました。業務改善を探して、はじめて、育てるという一連の流れのヒントが提供できたのではと思います。

 今回は、改善の進捗を目に見える形にする方法についてです。つまり、業務改善の測りかたです。このはかりかたには大きく2つの視点があります

 

一つ目は、数値で表せるものと表せないものという視点です。これらを定量的指標・定性的指標と呼びます。何個売れたとか何分縮まったなどと、数値で表すのが定量的指標です。一方、楽しく出来るようになったとかお礼を言われたなど数値で表せないのが、定性的指標です。

 この2つのうち、定量的指標ばかりを扱って業務改善の成果をはかろうとすることが多いものです。というのは、数値化したほうがわかりやすく、改善の最終指標である金額(もうけまたは費用)に直結しやすいからです。しかし、これでは、数値ばかりを追いかけた上辺の改善が増えたり、改善といいながら労働条件を悪化させるようなことが生じたりしがち。いわゆる効率主義です。

 「改善なんだから効率主義でいいじゃないか」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、この効率主義のせいで若手への技術伝承ができなかったり、行き過 ぎた実力主義が会社の一体感をなくしている例は多くあります。そして、今見直している会社も出てきている状態です。つまり、効率主義だけではだめなのです。

 そこで重要になってくるのが、定性的指標です。しかし、ただ「楽しくなっ
た」では、成果が見えにくいのも事実。そこでよく使われる手法が、アンケートなどでの5段階評価です。当初評価からあがってくれば、成果が出たと判断をします。
 しかし、そもそもあがらないような指標を選んでも意味がありません。最初に、聞くべき定性的指標をいかに選び出すかが重要です。ここは、トライアンドエラ
ーで経験則でつかんでいく必要がありますが、顧客満足アンケートなどが参考になるでしょう。顧客満足を社員満足に置き換えて、業務に携わる社員の思いを形にすることが業務改善の指標として大切です。

 二つ目は、ある期間の終わりでの指標・その途中での指標という視点です。終わりの指標をKGI(重要結果指標)、途中の指標をKPI(重要実行評価指標)と呼びます。これらはCSF(重要成功要因)とセットにして考えます。具体的には、CSFでその業務改善を成功させるための要因をみつけ、そのある
期日までの目標を決めたものをKGIとし、改善途中でそのKGIに向かって進んでいるかどうかを確認する指標としてKPIを決めます。

 例えば、CSFを「新規顧客を獲得する」としたら、KGIは「期末の獲得数を10とし、KPIとして新規訪問客数を30とする」などと、3つが連動するようにします。
 業務改善で例をあげてみましょう。複数枚セットの伝票を早く処理して次の部署へまわすという改善ならば、CSFは伝票処理の効率化、KGIは伝票処理の短縮時間を2日(4日→2日)とし、KPIは1枚の処理時間短縮とします。
 このように、実作業に連動させた小さな指標と大きな指標、そして目的の3つに関連性を持たせることが重要です。

 この2つの視点をバランスよく組み合わせ、業務改善の効果をはかるのに用います。定量的指標と定性的指標に関して、定量的が多くなるのは止むを得ませんが、定性的な評価を皆無にするのは危険です。
 また、CSF・KGI・KPIは、個々の業務改善で関連性をもたせるだけでなく、業務間同士の指標においても関連性をもたせるようにしてください。つじつまをあわせ、関係者に納得感をもってもらうようにすれば、指標が絵空事になりません。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする