G023 周辺機器の選び方(まとめ)で、IT化とOA化の違いについてお話しました。今回はそれと同じくらいよくある質問、「費用対効果」についてです。
原価管理システムを新たに開発したり、市販のグループウェアを導入したりするときに、必ず「これらの費用対効果はどうか」という質問があります。もちろん、一定の効果があるから導入するわけすが、それは導入先によって差があります。
しかし、会社の経営者サイドは、先に「削減コストが導入コストを上回らねばならない」「具体的な費用対効果を示しなさい」などと、導入前にある程度の数字を求めることが多いのです。この壁を前に、多くのシステム担当者は導入をあきらめてしまいます。
大手メーカーであれば、事前に試験導入した会社の資料を提出し、「2年で元が取れます。」とか「1年で数百万円のコスト削減を見込めます」等の話を持ってきます。しかし中小メーカーではそこまでできませんし、システム開発ではいっそう困難です。そこで、適当な仮説を立てて、開発にGOをもらっているようです。
結果、その言葉を鵜呑みにしてシステムを導入し、「思ったより効果があがらなかった」「やはりITは信用できない。最後に頼れるのは手作業だ」となってしまう失敗例も多いのです。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。それは、『費用対効果とは会社それぞれで違う』という当たり前の事実を見失っているからです。特に大手建設会社での事例は、スケールメリットつまり大きいことによるコスト削減効果が大半を占めています。例えば、経理システムに関して言えば、経理部に何人も抱えていたのが1人で済むようになれば、その人件費が浮きます。しかし、中小建設業の場合、もともと一人しか 経理担当がいないならば、システムを導入しても人件費は減りません。考えてみれば当たり前のことなのですが、このことをきちんと説明してくれるメーカーや 開発会社は、残念ながら非常に少ないのです。
また、同じ中小建設業でも差はあります。連絡系統、承認系統がしっかりしている会社でのグループウェア導入は、かなり効果大ですが、連絡も承認も元々たいして行っていない会社では、グループウェアは効果が上がらないどころか、かえって「手間が増えてコスト増になった」と言われることもあります。これは『システム導入の目的と業務改善の目的がきちんと整理できていない』ためです。システム導入自体が目的になってしまい、導入後のサポート(つまり、本当の意味での業務改善)がないがしろにされると、そうなってしまうのです。
さらに、上記問題点をクリアしていても「思ったより効果が上がらなかった」といわれる場合があります。
これは『導入前費用と導入後費用をきちんと評価していない』場合に多いのです。特に導入前費用をきちんと評価・集計せずに費用対効果を見積もっているケースが非常に多いです。システムの対象となる業務をきちんと費用化していないからです。たとえば、元々どれだけの時間がかかっていたかを測定して、経理部員の単価から費用を算出するという例はあまり聞きません。経理システムが導入されて時間短縮がなされたとしても、これでは比較しようがありません。適切な手法を用いれば間接費の算定は可能で、そのコスト削減効果も確認できるのですが、そこまでやっている会社はもっと少ないでしょう。
『費用対効果』というのは、業務プロセスを数値化し、システム導入前と導入後で比較して効果を確認することです。簡単ではありませんが、できないことではありません。次回は上記の問題点を踏まえて『費用対効果』を出すためのポイントをお話します。