前回、業務効率化に関する二つの方法、「権限委譲と情報共有」についてお話しました。今回はその効率化について話してみたいと思います。
ITを業務に導入した期待として、最もあげられるのがこの効率化です。無駄な作業を減らし人件費・経費を浮かしたり、ミスを減らして最終的な収益をあげるのです。経営者の方にとって、効率化という言葉は「甘い蜜」のような魅力があるようで、効率化だけのためにIT導入を決め、失敗した方も多くいらっしゃいます。
この効率化は、一部から「人減らしと同義語」だと攻撃されることもあります。「要は、パソコン使えないやつはやめろってことだろ。」とか「私の仕事をそんなに奪ってどうするつもりなの。」、「IT導入で経費を減らしたいんだろ。機械のほうが人より安いんだから」等々。こういった発言は、ある意味では事実です。
しかし、インターネットやパソコンが普及し、距離や時間の感覚が従来と一変してしまった以上、企業が勝ち残るためにやるべきことはたくさんあります。同様に、企業に勤めている人も、その変化についていく必要があるでしょう。今の時代、「変化が日常」という自覚を従業員にもってもらう雰囲気作りが重要です。これがないと、効率化だけでのIT導入は失敗します。
少し話がそれましたが、本題に戻ります。
すべてを効率化すればそれでいいのでしょうか。私は『そうではない』と思います。
例えば、ホームページをもったある企業に、あなたが見積を欲しいと連絡したとします。その際にメールだけで返事をしてくる企業と、メール+訪問もしくは電話で担当者が対応してくれる企業のどちらを選ぶでしょうか?
前者と後者では、前者のほうが効率的です。しかし業種によって異なるかもしれませんが、建設業では後者が選ばれることがかなり多いですね。建築相談はもちろんのこと、新しい建材の依頼、建設機械のリースを検討する際にも、後者が実に多いことをみなさんご存知だと思います。
もちろん、ホームページやメールアドレスをもたず電話や訪問だけで営業するのではそれ以前の問題です。ホームページで営業の範囲を広げ、メールにより効率的な情報提供を行える環境がなければ、新しい見込み客を見つける時間はもっと多く必要なはずです。つまり、効率化でよりよいサービスを提供するのが重要です。電話や訪問は非効率な部分ですが、これに時間を多く割くためにこそ効率化をするのです。
「効率化をして非効率な部分を充実させる」というと違和感をもたれるかもしれませんが、これは事務部門でも当てはまります。事務部門が経理システムを導入して経理業務が効率化すれば、そのぶん他の事務処理を行ったり、今までできなかった新人教育や現場へのフォロー、新しい企画活動を行えるようになるでしょう。これが大切なのです。
業務には、必ず、IT導入で効率的に行える業務と、人が介在して非効率にしか行えない業務があり、どちらも重要です。IT導入により業務効率化を目指すとき大切なのは、ただやみくもに業務を効率化するのではなく、効率的に行うべき業務と非効率ではあるが重要な業務を明確に見極め、それを従業員にしっかり理解してもらうことなのです。
効率化するツールはいろいろありますし、それこそメーカーに頼めばすぐに用意してくれます。しかし、非効率だが重要な業務を見極められるのは、業務を熟知しているその会社の人なのです。
従業員のやる気をなくすIT導入は、やらないほうがよい。逆に、IT導入のためには従業員のやる気を引き出すような雰囲気作りを怠らないようにしてください。「非効率なことをするのための効率化」、これがこの雰囲気作りのキーワードになるのではないでしょうか。