デジタルトランスフォーメーション(その4)

今回もデジタルトランスフォーメーションについてお話しをします。今日は経営戦略における情報の利活用方針についてです。

前回はDX導入の課題として、5つお話ししました。具体的には

1.部署ごとの個別最適
2.ベンダー企業への高い依存
3.ITツールの利活用低迷
4.業務内容のブラックボックス化
5.IT人材の不足

です。どれも一筋縄ではいかない課題ばかりですが、対策として最初にすべきことは1つしかありません。それは経営戦略の中に情報の利活用方針をきちんと組み込むことです。

課題となっている個別最適やベンダー依存、ブラックボックス化、ツールの低迷、人材不足はすべて、情報をどう社内で取り扱って、そのためにどのような技術を社員が身につけて、どこまで外部の力を借りるかが明確になっていないところからスタートしているのです。

例えば、会社全体の基本となる経営戦略に部署ごとに切磋琢磨しなさいとだけ書かれていたら、全体最適はできません。本当は切磋琢磨すべき部分と全体最適すべき部分は別なのですが、全部違いを見せるべきと勘違いしていることが多いです。

もちろん、既存業務の改善を放置すべきではないのですが、改善案や試行が出来た段階、本番に進む前に全社的に情報共有を行い、一緒にできることは一緒にやることが大切です。特にITは同じ業務を多くの人がやればやるほどメリットが出ます。その点を経営戦略の中で明示し、手順を示す必要があります。つまり情報開示についての方針を明確にすることです。

ベンダーへの依存も過度でなければいいのです。要件定義や運用面で方針をしっかり出す。手伝ってもらったことは自分たちが理解できるまでしっかり内容を確認するといったことをやれば大きな問題にはなりません。これは特に4つめの業務内容のブラックボックス化対策にも連動します。

これらは業務手順の標準化より前に行う見える化をしておけば防げることが多いのですが、どうしても標準化を先に出すために時間がかかりすぎて、既存業務が見えないままになっています。標準化されていなくても、社員のスキルや個々の部署の諸事情反映した現状を見える化(文書や写真、動画で誰でもがわかるようにする)できていれば簡単にブラックボックス化することはありません。

業務改善も進めるだけ進めてフォローをしないとブラックボックス化します。これらもきちんと形にして年に1度振り返るような方針を出しておけばだいぶ違ってくるはずです。情報の共有方法とその活用方法、外部の力をどこまで借りるかを明示する必要があります。

ITツールも同様です。エクセルマクロやフリーソフトなど生産性向上や業務改善でせっかく利用できているのに単にやめなさいでは社員の向上心までなくなってしまいます。届出制や許可制といった形で管理を行い、マクロの記載ルールをきちんと決めるなどしてチェックをできる体制があれば問題ないはずです。

ITツールの利活用はIT人材の不足とリンクしています。もし、全社員がエクセルマクロを使いこなされば、ブラックボックス化は最小限に収まるはずです。そこまでいかなくてもエクセル関数や集計機能、ワードのタブ、インデントなど、使えば負担軽減になる簡単なことをできない、やらないで非効率な業務をしているのはとてももったいないです。IT人材育成は会社のカギだと思います。

ITツールを使って、どのような情報をどこまで利活用する、そのための育成をどのようにすることは個別の部署ではダメです。会社全体として方針を出し、同じレベルにしてもらう必要があります。

あえてIT利活用ではなく、情報利活用としたかはITといった瞬間にソフトやハードの導入に意識がいってしまうからです。その前の経営情報、業務情報、人事情報といった会社内の情報を紙ベースでも利活用する仕組みがないといくらITツールを入れても十全に使うことはできません。

DXもそうですが、その前段になる情報の利活用も経営戦略段階から組み込んでいかないとダメな時代になっていることを自覚するだけでなく具体的に明示することを忘れないでください。

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