今回もデジタルトランスフォーメーションについてお話しをします。
前回はデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入ステップを説明しました。御社でどの段階まで進むかは別にして、第1段階の「DXに触れる」はぜひ行ってもらいたいです。DXだけではなく、業務改善のヒントにもなると思います。
少し脱線しましたが、今回はDX導入の課題というか壁についてお話しします。DX導入の課題として、よく言われることは以下の5点です。
1.部署ごとの個別最適
競争力を高めるために独立採算性や個別指標を部署ごとに設定した結果、個別最適を優先する風潮が多いです。結果として、ITツールも個別最適化してしまい、企業全体でのデータ管理、システム連動が難しい状態になっています。
基準が支店や店舗によって違う、入力項目が異なるなど同じ会社とは思えない数々の差異がDXの障害になるのは言うまでもありません。
2.ベンダー企業への高い依存
システム開発に関して、ほぼベンダー企業(システム開発やITサービス提供を行う企業)に丸投げの企業が少なくありません。結果として、開発や利用ノウハウがベンダーに集まるだけでなく、重要な要件定義まで自社で管理できていない状態となります。
また、システム開発や導入コストの軽減を重視するあまり、小規模なベンダー企業に発注した結果、その企業が倒産したためにノウハウも維持管理もすべて失ったという例も少なくありません。
3.ITツールの利活用低迷
これは上記にも関連することですが、せっかく導入したサービスも自社専用にカスタマイズしたシステムも隅から隅まできちんと利用している企業はとても少ないです。
また、エクセルやワード、パワーポイントといった基本的ツールを十分使いこなせていない企業も少なくありません。頻度の低い業務にもかかわらず、高価な開発費をかけて機能として追加し、機能が多すぎて使いこなせいといった負のスパイラルの企業もあります。
オフィスソフトをある程度使いこなせるとどんなことがITでできるかが推定しやすくなるのですが、それがわからず、ベンダーに丸投げとなるのです。
4.業務内容のブラックボックス化
3.の内容とは反対にエクセルマクロを多用して、神エクセルといった使い方をするケースも少し問題があります。社内での限定的な利用でも、簡単なものでいいので要件定義書やシステム設計書を記載したほうがいいのですが、このような管理されていない野良マクロやシャドーITと呼ばれる非管理なミニシステムが増えてくることで業務内容がブラックボックス化していることがあります。
ブラックボックス化とは根拠や計算の仕組みわからないまま利用していることを言います。日本は終身雇用制のもと、「阿吽の呼吸」「忖度」といった形で暗黙知が多く、昔ならばその理由や意味を理解していた社員がその理由や意味を伝えず、手順だけを伝えているためにこのような問題が発生しているのです。
5.IT人材の不足
これは上記4つの根本原因であり、一番の問題だと思いますが、企業の中にある程度のITツールに精通し、自社のIT成熟度(利活用度)を考慮でき、ITツール・サービスの教育ができる人員がいないことです。
アメリカでは、IT技術者の7割がユーザー企業側に所属しているのに対して、日本では4分の3がベンダー企業いわゆるIT開発サービス提供側に所属しているそうです。つまり自社でITツールを作ることもできないだけでなく、良し悪しも判断できない企業が多いということです。
昔は情報システム部といった形で存在していた企業もバブル崩壊後、減少傾向となったとの話しを聞くと、この選択ミスが日本でのDXが根付きにくい最大の理由ではないかと考えます。