デジタルトランスフォーメーション(その7)

今回もデジタルトランスフォーメーションについてお話しをします。今日は言葉(意識)の違いについてです。

前回、デジタルトランスフォーメーションのポイントは結局「人」であり、その「人」の意識が変わらなければ実現は難しいとお話ししました。今回はその続きで、DX本来の意味を違う意味にとられているかもしれないということを少し類義語でお話しします。

(1) 業務改善と業務改革

業務改善はみなさんご存知のように既存の業務プロセス(手順)のより良い見直しであり、基本は既存の延長上にあります。当然、持続的に行うことであり、PDCAサイクルを回していきながら、一定の基準を決めて、改善範囲は個々の業務となります。

それに対して、業務改革は当然、ゼロから作り出す全く新しい業務であり、当然、基準や手順、体制(人の役割)は既存にとらわれることなく考えていく必要があります。また、仕組みを新しく作るので、検証期間は必要ですが、一時的なものであり、プロジェクトチームで行うことが多く、効果がわかると改革活動は終了します。改革ですので、効果は目に見えてわかり、結果として広範囲の業務に影響を与えることが多いです。

DXは基本デジタルな業務改革であり、業務改善のように体制も変えずに既存手順も大きく変わらないようなものではないということです。当然、組織変更が起きるため、ある人の役割は終わりを告げる可能性は高いです。気軽にできるものではありませんし、痛み(正しい姿でのリストラクチャリング)を伴うことも否定できません。

にもかかわらず、ITシステムやデジタル機器を入れて業務改善的な活動をすると永続的な大きな効果が得られるような意識の方が多い気がします。それは違うことを理解してください。

(2) デジタイゼーションとデジタライゼーション

日本語がうまく当てはめにくいのでそのまま使っていますが、似て非なる単語です。残念ながら、グーグル翻訳では両方ともデジタル化と訳されてしまいます。

デジタイゼーションはアナログ作業のデジタル化です。紙ベースの顧客管理がデータベース化され、検索や更新が容易になったり、手作業での入力がRPAで容易になるとか、センサーで不要になるとかいったレベルのことを指します。手順は変わりますが、基準や体制を変えるほどではないです。

それに対して、デジタライゼーションはデジタル化された情報と技術を利用して、業務そのものを大きく変えるものです。例えば、スマホやタブレットを使って、営業日報を提出できるようになったことで従来帰社していた営業が直行直帰ができるといったような感じです。当然、デジタイゼーションで営業日誌がデジタル化されていなければ、実現できませんし、手順だけでなく業務基準も変える必要があります。電子承認といった管理の仕組みも変わるとより効果が高くなります。必須項目の未記入や記載ミスもシステムでチェックすれば、体制も変わりそうです。

デジタルトランスフォーメーションは当然、デジタイゼーションが完了し、デジタライゼーションを進めた先にあります。つまり、プロセス(手順)レベルではなく、ビジネスモデルそのものを大きく変革するものです。経済産業省の定義では「競争上の優位性を確立」するレベルです。

例えば、レンタルビデオがDVD、ブルーレイディスクで借りてくるのではなくて、ダウンロードやストリーミングといった形で動画を見てもらうという変化です。対面接客はなくなり、店舗も不要になります。メインになるのは動画データを管理するデータセンターとレンタルサービスのシステムといった感じでしょうか。接客技術よりデジタルデータの管理技術が重要となってきます。採用される人も変わってきますよね。

当然、業界ごとではDXが乱立するということはありません。一般化されたビジネスモデルではDXとは呼べなくなるからです。業界初や世界初といったことに自然となります。生みの苦しみはもちろん、最初は試行錯誤の連続だと思います。

DXはITシステムを買えば、なんか自然に便利にできるといった簡単なものではないということです。

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