すみません。最近、「建設業を取り巻くIT」が難しく固い話題ばかりですね。経営陣もしくは管理職のかた向けにお話しするとこうなってしまいます。できるだけ平易な言葉で説明するように努力しているつもりですが、分かりにくい言葉が多いようです。不明な点は遠慮なくご指摘ください。改善するように努力したいと思います。
さて、今回も堅い話で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
『俺は経営陣でも管理職でもないから、興味ないよ』という方もいらっしゃるでしょうが、社員ひとりひとりがす。会社がどうあるべきか(つまり社長になったつ もりで)考え行動することは、非常に会社の力になります。(私は「社員総社長化」と呼んでいます。)私自身も、入社して1、2年目はわかりませんでした が、3年目ぐらいから自分の立場(木を見る人)、社長の立場(森を見る人)の両方の見地から業務に臨むと、さまざまな見方で結果を判断できるようになった と思います。(もちろん、本当の社長の立場はどんなものかわかりませんが。)そうすることで、今やっている本来の業務はどんな意味を持つのか考えるようになり、業務改善の糸口がつかめた気がします。
ですから、この話は経営陣や管理職でない方にもぜひ読んでいただき、会社の見方を変えるヒントにしていただきたいのです。
さて、前置きが長くなりましが、本題です。業務効率化に必要な二つの大きなプロセス(手順)についてお話します。
一つは、大きな組織を小さな自立した組織にして、決断する時間をスピードアップする方法です。これに必要なのは、権限委譲(かっこいい呼び方ではエンパワーメント)です。上職者の許可を得ることなしに様々な業務上の判断をくだせるのは、自立した組織では必須です。うまく機能すれば、スピードアップによる効率化だけでなく、社員のやる気向上・職場の活気向上などの副効果も期待できます。
もう一つは、二度手間や同じ失敗を防いで、最小限の労力で仕事を行える環境を作る方法です。これに必要なのは、情報共有(かっこいい呼び方ではナレッジシェア)です。好事例、不具合事例、アイデア、知恵、経験則等様々な情報を集めるには、情報を収集・配布する仕組みが欠かせません。うまく機能すれば、最小限の労力で仕事をできるだけでなく、ミスが減って品質が向上する、職場での意識共有による一体感創出などの効果も期待できます。
この二つの方法は、業務効率化には非常に重要なのですが、並び立たない場合が多いのです。なぜでしょう。それは、会社全体でこの二つの方法をきちんと役割分担していないからです。
よく見られる傾向として、権限委譲は、会社の規則や組織改変など経営陣主体で行われます。情報共有はグループウェアやナレッジソフトといわれるソフト導入で、つまり情報システム部主体で行われます。一体化して展開されてはいません。
この結果どのようなことが起こるのでしょうか。
権限委譲が強くなると、部下は上司に情報を与えることなく判断し結果を出します。そうすると、失敗の隠蔽が増えるでしょう。当然、その部下の得た教訓を、上司は他の部下に生かすことができません。結果的に、情報の囲い込みが進んで共有化が阻害されます。
一方で、情報共有を強く勧めると、報告先・連絡先が増えて承認業務が滞ります。承認ルートは係員・課長・部長だけなのに、情報共有の一環として主任や副部長にも目を通してもらうと、そこで意見が入って却下や修正が出てしまう。業務が遅延し効率化が図れません。
解決策としては、両方を一体として考え、情報の流れを明確にすることです。権限委譲により申請者・審査者・承認者をしっかり決め、それ以外のものは閲覧のみとする。ただし、情報が局所的にとどまらないよう、影響する人たち(かっこいい呼び方だとステークホルダー)には必ず閲覧できるような仕組みを作ることが大切です。
このためには、経営陣が会社規則や組織改変をするだけでは、不十分です。それに伴うITが導入され、スムーズな情報の流れを作らなねばならないのです。私が日頃お話する、経営のためのIT、ITを使った経営でないと真の業務改善ができないというのはこういう理由から来ています。
権限委譲と情報共有、両輪がうまく機能して初めて会社は前に進んでいくのです。