費用対効果のポイント

 前回、費用対効果の問題点をお話ししました。まとめると、
 
 ・費用対効果は会社によって異なる(スケールメリット)
 ・システム導入の目的と業務改善の目的が整理できていない
 ・導入前費用と導入後費用を明確に評価していない

 この問題点を解決するためのポイントとは何でしょう。前回もお話したように『費用対効果』とは、対象となる業務の流れを数値化し、システム導入の前後を比較して効果を確認することです。
 

つまり、

 ・システムの目的を明確にする。
 ・はかる物さし(数値化できるもの)を決める。
 ・対象となる数値を、導入前と導入後に測定する。

上記を実施して、誰もが分かるようにすることなのです。では、それぞれを見ていきましょう。

1.システムの目的を明確にする。

 当たり前のようで、意外をできていない場合が多いようです。
 他社がやっているから何となくとか、発注者や得意先に要望されて導入したためです。特に電子納品システムやグループウェアなど、その格好の例でしょう。もちろん、きっかけは他社や発注者でもかまいません。大切なのは、導入すると自社は何が変わるのか(変えなくてはいけないのか)をしっかり把握することです。そうすれば、導入の意味があります。

 電子納品を例にとると、納品で作成した書類を再利用して着工時業務の負担を軽減したり、テンプレート化(ひな型をつくるということです)によって業務を標準化するなどが、目的として考えられます。そしてそのためには、着工時に必ず既存資料を書類データベースから探し出す等の作業ルールを確実に構築しておく必要があります。『システムは入れたけど、業務ルールは特に決めていない。該当する人がマニュアルを読んでやればいいんだよ』というのでは、費用対効果以前の問題です。

2.はかる物さし(数値化できるもの)を決める。

 みんな(特に経営層)が分かるようにするには、数値化が一番です。『何となくみんなが楽になった』ではいけません。システム導入の結果が必要なのです。ただし、注意していただきたいのは、決して金額だけが数値化の単位ではないということです。

 例えば、古いシステムを新しいシステムに交換したとしましょう。業務的には大きな変化はありませんが、不具合による修理時間が減ったとか、ベテランでなくても操作できるようになった(修得時間が短くなった)などというのも数値化の指標です。更に言えば、それで空いた時間を他の業務にまわせるのでコスト効果とつながるのですが、そこまでやろうとすると大変です。(空いた時間の代わりになる業務の単価を測定するのが難しい。) また、先ほど話した『楽になった』という要素も、アンケートなどによる満足度5段階評価で比較することも可能です。(定性要素の数値化といいます。)
 大事なのは、一つの指標ではなくいくつかを組合せて、導入したシステムをできるだけ総合的に評価することです。費用対効果というとすぐにお金の話になりますが、それだけではないことを理解してください。専門用語では、KPIやKGIといいます。

3.導入前と導入後で対象となる数値を測定する。

 最後に、2.で決めた物差しで、導入前後の測定をしっかりするということです。残念ながら、これが全くできていません。問題点の一つは、はかる物差しを決めていないことなのですが、もう一つは、導入前に費用対効果の話で盛り上がっていながら、導入後は『入れたもん勝ち』といわんばかりに導入後はほったらかしだからです。中小企業だけでなく大手企業でも同様の傾向があります。モニタリングといって、定期的なチェックと報告がなければ、本当の費用対効果は出ないのです。

 以上の3点をおさえて、はじめて費用対効果の話ができます。
 確かに、導入時に概算の費用対効果が必要なこともあります。その場合は、1.と2.をきちんと決めておけば、3.の導入後を推定することで可能です。大切なのは、導入前に目的とものさしをしっかり作ることです。なかなか難しいとは思いますが、やってみたいと思う方はぜひ弊社にご相談ください。