経営改善と業務改善(その30)

今回も経営改善と業務改善についてお話します。

前回は内向きの経営方針についてお話しましたが、今回はコミュニケーションの補足と会社のキーパーソン育成についてお話します。

非公式コミュニケーションによる価値観共有

まずは、コミュニケーションの補足です。コミュニケーションの話は都度都度しています。改めて、お願いしたいのは、一方通行の会話はなくして、よく話す、よく聞くの相互通行の会話を行うことと社長等の幹部なら社員、社員なら上司、同僚、部下をよく見る、よく知ることで価値観共有をしっかり進めて、相互の発言に誤解が生まれないような環境づくりを行ってほしいということです。

特に昨今はテレワークや直行直帰により、会話をする機会が減っています。結果として、最低限の業務に関する会話となり、価値観共有を進めるための非公式コミュニケーションができていません。

経費の削減で社員旅行、社内運動会はなくなり、個人を尊重するために飲み会も開催することが少なくなりました。もちろん、おやつ会(週1回での3時ごろに行うフランクな集まり、15時ブレイクと呼ぶ場合もある)や社内部活動といった形で勤務時間内での給与付き非公式コミュニケーションの場を作っている会社もありますが、まだまだ少数派なのが残念です。

社員の意思確認のために、半年や四半期での面談実施を行っている会社もありますが、上記の非公式コミュニケーションが十分でないとそもそも価値観共有ができていないために、適切な判断ができるような面談ができていないように感じます。

非公式コミュニケーションを勤務時間に設けることに抵抗のある方は少なくないと思いますが、働き方改革が進み、兼業副業が可能になれば、ますますそのような場所がないと価値観共有は進みにくいと考えます。

コミュニケーションツールの活用

それでも、リアルで場を作るのが難しければ、クラウドサービスのコミュニケーションツールを使い、趣味や雑談を話せるグループを作ることでカバーすることもできます。こちらは、不得手な方へのフォローが不可欠ですが、IT利活用は経営改善、業務改善には必須なので、このような場を使って、技術習得を促すのも一つの方法です。

10年以上前に、飛行機で行き来しないと難しい距離の離れた工場間での情報交換のために、プレイステーションのAVチャットを利用したことがあります。ゲームのコントローラーなので、操作習得も難しくなく、最初は公式会議だけだったのが、非公式な会議の利用も行われ、両方の工場の価値観共有が大きく進んだことがありました。

コミュニケーションツールの選定で悩まれる方が多いですが、難しく考えず、使ってみて、合わなければ次のツールを検討するといった感じで、早く触って経験値を増やすことが大事だと思います。

番頭さん

もう一つの会社のキーパーソン育成は、「番頭さん」です。以前なら建設会社では必ずいたと思われる「番頭さん」を最近は見かけなくケースが増えたように感じます。特に事業承継で先代から引き継ぐ際に、後継経営者と一緒に経営を進めていくための相棒がいないまま、引き継いだために、経営に苦労されている方をみることがあります。

中小企業では事業承継は親子で行うケースが多く、その二人の意思疎通が会社全体に波及していない結果、経営がうまくいかないといったケースがあります。特に事業承継を機に経営改善を行いたいと思っている場合に、先代から努めているベテラン社員とのトラブルが少なくないです。

その際に活躍するのが「番頭さん」です。親子ではない第3者目線で事業承継を進めていくための経営側の人財です。親子だとついつい省略しがちな「あうんの呼吸」を言葉にして、社員や外部に伝えることができる、経営者と社員のコミュニケーションのカギになる人です。だから、キーパーソンなのです。

もちろん、経営者と社員をつなぐ役割をするだけではありません。経営者が、金融機関等資金調達や将来像(未来の飯のタネ)を準備する中で、現実の業務(現在の飯のタネ)のPDCAを回して、事業を円滑に進めるための役割も担います。流行り言葉でいうと、社長をCEO(最高経営責任者)とするならば、番頭はCOO(最高執行責任者)です。

分担の仕方によっては、上下関係ではなく、二人三脚的な動きをする(財務面と業務面で分担)場合もあると思いますが、いずれにしても、経営者が一人で判断に迷うことがなくなり、社員と一体感のある経営改善、業務改善がすすめるための仕組みとして重要な人財だと考えます。

経営の神様と呼ばれた松下幸之助氏が言われた「事業は人なり」の一つのポイントだと思います

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする