経営改善と業務改善

今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)の紹介から派生して、経営改善と業務改善についてお話します。

まず、経営改善とは何でしょうか。一般的には会社の存続が難しい状態になっている経営状況を改善することです。もっと端的にいうと売上をあげるか、費用を下げるかして、利益をより多く確保することです。もちろん、比較的安定している状態でも一ランク上の利益確保や会社像を目指す場合も経営改善になります。

この利益確保が主目的となり、その障害となっている経営課題を見つけ出して、取り除くという作業が主たる作業となります。当然経営者の関与は必須ですし、会社全体の取り組みですから無関係な人は基本いません。また、そのためにどのような方針でどのような目標でどれくらいの期間でどのように進めていくかを文面にまとめて、関係者に伝える必要があります。関係者としては会社全体が基本ですが、状況によっては、融資を受けている金融機関や顧客、協力業者、仕入業者等にも伝える必要が出てきます。

関係者が多岐にわたるので、進捗や成果に関しても情報共有を行うために文面化は必須ですし、できるだけわかりやすくまとめることも重要になってきます。

一方、業務改善とは何でしょうか。業務自体をよりよい状態にすることです。改善することで生産性や安全性向上、品質向上などを目指すことです。最近は働き方改革の影響で、作業環境の改善も業務改善のテーマとして増えてきています。

このいろいろな向上に目標値を設定し、それを達成するために障害となっている業務課題を見つけ出し、対策を考え、実行することが主たる作業となります。言い換えると「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、ヒト・モノ・コト(情報)の流れをよくして、カネ(原価)を小さくすることが求められます。

業務改善は関係者が限定され、一部の社員で実行することから規模によっては文面もなく、成果としての作業時間短縮や不良率低下といった結果だけ、関係者外が理解することも少なくありません。結果として、関係者の暗黙知的な改善が増えてきて、業務の引き継ぎに支障が出る場合もありますが、手間暇を考えるとなかなか文面化できていないのが実情です。

明らかに内容としては違うものなのですが、なぜか混在して進められようとしていることがあります。具体例でいうと経営改善といっておきながら、利益的な数値目標がなく、一部の業務をよくすることに視点が置かれており、手法や結果も一部の人にしか情報共有できていないといった具合です。

経営者が積極的な関与をせずに、影響が大きそうな業務関係者に丸投げしている場合やそもそも原価が把握できていないためにどこが自社のウィークポイントか把握できていない場合によくおきます。いいかえると経営課題が見えていないという状態です。

経営改善の場合は業務そのものの存在自体も検証することがあります。昔からの流れで行っているがその業務が本当に必要なのかどうか、業務をなくすことも視野に入れて検証する必要があるのですが、業務改善的な視点で業務はあり気で改善しようとしていることも少なくありません。これでは成果が少なくなります。

いわゆる、対象の聖域はつくらないのが経営改善の基本ですが、社内の力関係(経営者より社歴の長い業務担当者の影響・・・)で手をつけられないとか、業務が属人化していて、目的が不明瞭な上に、担当者自身も業務そのものが目的になっているといった場合に問題意識がないために聖域化してしまうこともあります。変えたくないとか変えなくても今までよかったというセリフがよく聞かれます。

結果、改善効果が思ったより出ずに、やっぱり経営改善はダメだという困った結論に達しているケースもあるのは残念です。経営改善は業務改善の積み重ねではありますが、経営改善でしかできないことがあるということをまずは認識しましょう。次回はそのあたりをもう少しお話します。

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