経営改善と業務改善(その13)

今回も経営改善と業務改善についてお話します。

前回は「原価(コスト)」の管理について、2つのコスト(改善でえられる低減効果と改善のためにかかる費用)をお話ししました。今回は大事3つ要素である目標(スコープ)、納期(タイム)、原価(コスト)のバランスについてお話しします。

前回のコストの際にもお話ししましたが、成果(改善効果)に見合った費用にするバランスが必要だとの話をしました。これはコストに限らず、全体バランス(スコープ、タイム、コスト)にも言えることです。

目標を高くすると、当然、時間もかかりますし、費用もかかります。ここで、時間制限や費用制限をかけると思った目標に達成できない場合も出てきます。逆に時間や費用の制限をかけた状態で実現できる目標にしようとすると目標を小さくせざる得ないといった状況になります。

もちろん、どこかを無理することで少ない時間や費用でより高い成果を得られることもありますが、多くの場合、1回限りといった限定的なものとなり、継続的な改善につながりません。「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすための改善活動が「ムリ・ムダ・ムラ」を生み出していては意味がありません。

以前、経営改善と業務改善は連動することがより高い効果をあげることをお話ししましたが、そのためには改善活動の継続が必須です。数年、数十年、できれば、業務の一部として定着するぐらいが理想です。世の中が日進月歩で変化する以上、改善が不要になる時代はこないと思います。ということは、ずっと改善し続けるために「ムリ・ムダ・ムラ」のない活動を行うことが不可欠なのです。

「ムリ・ムダ・ムラ」のない活動を行うことは別の言い方をすると「スコープ、タイム、コスト」のバランスをきちんととるということだと思います。とはいえ、3つともを同時に考えるのは難しいです。どこから手を付けたらいいでしょうか。

理想を言うと目標(スコープ)から考えて、それに見合った納期(タイム)、原価(コスト)を決める流れが経営改善から業務改善につなぎやすいですが、改善に不慣れなうちは高い目標を掲げがちで無理な活動をしてしまいます。

なので、最初は計画の区切りとなるマイルストーンを納期として対応できる人員や費用を考慮したうえで、目標を設定するといった逆の順番をお勧めします。つまり、大きな目標を立てたら、マイルストーン単位でかつ人員や費用に見合った小さな目標に分解することがポイントになってきます。マイルストーン単位の目安はフォローをこまめにするなら3か月、そうでないなら6か月ぐらいです。

もちろん、慣れないうちは目標を高めにしがちなので、マイルストーン単位で必ず振り返りをして、人員や費用に見合った内容に修正していく必要があります。もしくは目標に見合った人員や費用をかけていく必要があります。どちらにするかは会社の方針ですが、中小企業ではなかなか人員や費用を増やすことは難しいので、目標を見直すことが多いです。

気を付けてほしいのは目標を見直すのは別に最終目標を小さな目標に変えるのではなく、当初目標の達成時期を少し後ろに下げて、マイルストーン単位での負担を減らすということです。全体視点で見るとスコープを維持して、タイムを伸ばし、コストをその分だけ余分にかけるということです。

慣れてくれば、マイルストーン単位でできる改善内容は増えてくるのでタイムが縮まってくると思います。最初に無理せずに改善活動を定着させることに重点を置くほうが最終的にはメリットが大きいと思います。

とはいえ、改善活動を円滑に進めるためには「スコープ、タイム、コスト」だけでは不十分です。業務基準や業務分掌(役割分担)の見直しと改善基準の設定や改善手順の教育といった環境整備も必要です。次回はそのための要素についてお話しします。

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