経営改善と業務改善(その28)

今回も経営改善と業務改善についてお話します。

経営者目線と社員目線

前回は改善のための人員対策について、お話をしましたが、今回は、その続きで、経営者目線と社員目線についてお話します。

経営改善は会社の存続が難しい状態になっている経営状況を改善する場合や比較的安定している状態でも一ランク上の利益確保や新しい会社像を目指す場合に行うものです。当然ですが、経営者がリーダーシップをとって、経営者目線で実施していきます。

業務改善は特定の業務自体をよりよい状態にすることです。改善することで生産性や安全性向上、品質向上、作業環境改善といった内容で実施します。担当者が行うので、社員目線です。

この2つの改善を連携させる方法として、バランススコアカードの戦略マップの紹介をしました。しかし、経営者目線と社員目線は決して一致しないことがあることを留意しておく必要があります。

2つの違い

例えば、経営者目線としては、利益率向上を目指し、生産性を向上させ、残業代削減を実現すべく改善活動を行ったときに、社員目線では、単に残業代カットとして捉えられることになります。

会社としては、利益が増えても、必ずしも社員の利益である給与が増えるわけではありません。これは、経営改善と業務改善の方向性を一致させたとしても変わらない事実です。

会社の存続が厳しい状態であれば、社員は雇用を失うことになるので改善活動に対して、協力的に動くと思いますが、さらなる利益確保の場合は、給与が変わらないのに何でやらなくちゃいけないのと思う社員も少なくないと思います。むしろ、手慣れた仕事を変えるなんてまっぴらごめんという社員もいるかもしれませんね。

そのために、人事評価を行ったり、報奨制度を作ったりする必要があるのは以前にお話した通りです。ITツールの操作教育や改善活動のための知識習得のための集団講習といった活動も不可欠ですし、改善活動のための時間確保やそのための仕事の協力体制も必要です。できれば、「うちは改善するのが当たり前」といった社風や「出る杭を打たない」環境を育てないといけません。

残念ながら、この目線の違いを意識しないまま、改善活動だけを強いている企業が少なくなく、結果として改善成果がきちんと得られていない話を聞きます。「社長ががんばるのだから、社員もがんばれ」といった根性論では、だれもついてきません。

特に、業務が大きく変わるような改善を行う場合は、事前の十分な説明と協力依頼が不可欠です。経営者側がこれをおろそかにするとキーパーソンが会社を抜ける(退職する)ことになり、改善どころでなくなるのはいうまでもありません。

目線を一致させるためのポイント

では、改善に不慣れな企業や初めての企業はどうすればいいのかというと、やはり、改善の基本である小さく始めて、大きく育てるを実践するしかありません。比較的効果が出やすく、だれも納得して取り組みやすい業務改善から始めて、少しずつ、規模や難易度をあげていきながら、改善のメリットを会社全体に広げていけるようにしていきます。

もちろん、人事評価や報奨制度、社員教育の仕組みづくりも進めていくことが重要です。いわれたことをこなすことが従業員だと思っている社員にとって、自らを変えることはとても難しいです。なので、社員教育には改善手法だけでなく、意識改善の教育も入れながら、進めていきましょう。意識改善は下からではなく、部長職、課長職といった順番に上から行っていき、徐々に経営者の視線を取り込んだ管理職を育てていきます。

そして、改善が会社の業務の一つというようにある程度社風ができてきてから改めて、経営者のトップダウンのもとに、経営改善と業務改善をリンクさせた会社全体の改善へと進めていきます。

時間はかかりますし、簡単ではありませんが、経営者目線と社員目線は、簡単には一致しません。全体を見る目と部分を見る目だからです。とはいえ、方向を同じにすることはできます。改善を成功させるというよりは失敗させない重要ポイントだと思います。

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