今回も経営改善と業務改善についてお話します。
前回はコミュニケーションについて、少し脱線した話をしました。今回は、改善のための人員対策についてお話します。
社内でのコミュニケーション不足が改善の一つの大きな障害になっており、これを解消していくことが改善の成功への一つのカギだと思います。そのために価値観を共有できる場づくりが必要だとお話ししました。
改善のための人員不足
このコミュニケーション不足と同じぐらい、改善の大きな障害となっているのが改善に対する人員不足です。正確に言うと、中小企業において改善に対する知識や意欲がある人手が不足していることが改善できない理由になっていることが多いということです。
改善に必要な最初の条件は「現状に不満を持つこと」です。「もっと楽に作業したい」とか「私だけでなく誰でもできるようにしたい」とか「繁忙期でも効率よく仕事して、早く帰れるようにしたい」といった現状を変えたい気持ちがないと改善意欲は出ません。仕事に慣れてしまっているベテランさんになると、変化を嫌がる人もいて、かえって改善の抵抗勢力になることも少なくありません。
ベテランさんの期間・時間限定雇用
そのためにお勧めしているのが、ベテランの経験をもっていながら、改善意欲の高い人を期間限定や短時間労働者(週1回とか)で雇用することです。もし、その方が現在、他企業に就職されていたとしても、副業や兼業が可能であれば、依頼してもいいと思います。
ちなみに副業は、「メインとなる本業とは別の仕事をもつこと」で、兼業は「複数の業務に携わること」です。なので、意味的には大きな違いはなく、副業の方が少し重点に置いている仕事があるといった重みの差があるぐらいです。
2018年に厚生労働省が「モデル就業規則」に副業・兼業の規則を掲載するようになり、週休三日制の制度や60歳以降の再雇用による賃金見直しなど社会環境が大きく変わってきており、雇用に関して、自社の規則を見直すことで新たな人材確保の方法を考えてみましょう。
学生・若者の期間・時間限定雇用
逆に若い人の「業務を知らない」目線から改善をすることもいい結果を生み出すことがあります。こちらの場合もアルバイトやパートといった方法で雇用することができると思います。もちろん、単に改善専任だとさすがに難しいので、例えば、自社のIT担当として、入ってもらい、IT化を通して、改善を促してもらうといった通常の職務がある方がいいと思います。
また、新規雇用も兼ねるのであれば、インターンシップ(就業体験)制度を取り入れるのも一つの手です。通常の業務を体験してもらったのち、違和感を感じる点を挙げてもらい、可能であれば、変えたい内容を聞くといった方法がとれると思います。
「とはいっても若い人だと業務や改善に対する知識が少ないのに、教える人がいないので不安」といったこともあるので、できれば、ベテラン雇用とセットで行えるのが理想です。
専門家派遣制度の利用
「いや、そもそも自社に改善活動に対する知識や経験がないのだが」という企業なら、国や都道府県、商工会議所・商工会といった支援機関と呼ばれるところが提供する専門家派遣制度を利用しましょう。有料の場合が多いですが、民間企業より安く、回数限定の無料の場合もあります。相談窓口だけなら無料ですので、まずは問合せてみてください。お取引している金融機関でも、紹介してくれる場合がありますので、そちらに聞いてもOKです。
知識・経験のあるベテランさんが雇用できれば、OK。そうでなければ、支援機関に相談して、専門家を派遣してもらい、改善に対する知識と経験を自社に蓄え、パートやアルバイト、副業・兼業者といった雇用形態で人材確保にトライしてみましょう。