経営改善と業務改善(その5)

前回に引き続き、経営改善と業務改善についてお話します。

前回は経営改善の目標と業務改善の目標をつなぐ方法として、CSF(重要成功要因)、KGI(重要結果指標もしくは重要目標達成指標)、KPI(重要実行評価指標もしくは重要業績評価指標)の3つの管理指標についてお話ししました。日々の業務改善が経営改善につながることを数値的に感じる仕組みといったところでしょうか。

今回は前回も少し触れていますが、指標管理を含めた改善状況の把握と変更管理についてお話していきます。

改善を数値化することで進捗状況が把握しやすくなりますが、数字で拾えない状況というのもあります。むしろ、数字を達成するために無理な改善をしている可能性も少なくありません。よりよい業務を目指す目的が失われ、管理指標達成が目的になり、逆にムリ・ムダ・ムラが発生している悪い例です。

現場に行って、現物を手に取り、現実を直視するいわゆる三現主義は改善活動においては、とても重要です。また、その状況になった過程や原因の把握も必要です。つまり、定期的な数値確認以外での振り返りを行うことが大切です。

振り返りを行うにあたり、関係者を集めて、会議をするのは経営改善レベルではやむを得ないかもしれませんが、業務改善レベルではあまり望ましくありません。先ほど言ったように、現場に行かないと見えないことがあるからです。

建設業でも現場からの月次報告を営業所や本社に所長が集まってすることがありますが、並行して、幹部クラスの現場視察がセットでないと真実は見えにくいと思います。個人的な経験ですが、現場をきちんと見に来ていた幹部がいた時には事故や不具合が少なく、目標達成度も高かったように感じます。振り返り会議が無駄というわけではなくて、現場巡回とセットにする方が良いということです。

もちろん、ただ見に来ているだけではダメで、改善活動の実際の状況を職場の人のじゃまにならないように見守るように見て、後で所長やリーダーに気になる点や見直したほうがいい点をアドバイスすることが望ましいです。よく現場巡回といってわかるように幹部の方が見回ることがありますが、ムリムダムラはこういう時には隠しがちなので真実が見えてきません。ひょっこり来るぐらいのほうが、いつ来るかわからないという緊張感を現場に持たせることができるのでお勧めです。

とはいえ、神出鬼没というのも緊張感が持続しないので現場巡回の期間だけ明示して、場所や順番は任意といったほうがいいと思います。会社自体で始めたばかりの時は緊張感があるので、このようなことをする必要はありませんが、何年か継続して行っている場合はこのような刺激策を取り込んだ対応が効果的です。

さて、現場巡回や振り返り会議をして、円滑に改善が進むようなフォローを行ったとしても目標達成が難しかったり、改善手段が適切でないことが見えてきたりすることがあります。そのようなときには思い切った目標変更、方針変更、手段変更を行うことが必要になります。

ただし、いきなり目標を下げるというのではなく、改善の進まない原因を突き止めて、まずは手段を変えてみる。それでも難しい場合は改善関係者の追加・変更や改善の方向性など方針を変えてみる。そして、それでもダメなら目標を見直すといった段階を踏んでいく必要があります。

目標は極力変えないほうがいいのですが、会社で経営改善や業務改善を始めたばかりで社長含めて社員全員が改善になじめていないときは無理をせずに改善活動自体になじめることを優先したほうが結果的に将来につながることがあります。このような段階では目標を納得のいく理由をつけて変更することは問題ありません。注意すべき点はちゃんと変更理由もつけて、関係者全員に説明することです。それができないと「うちは朝令暮改で信じられない」ということになってしまいます。

改善活動はそれをフォローする活動をセットで初めてうまく回ると思います。「あとは現場に任せた」はないと思ってください。

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