経営改善と業務改善(その18)

今回も経営改善と業務改善についてお話します。

要員管理とPMBOK第6版の変更点

前回は管理6要素(品質、要員、コミュニケーション、リスク、調達、関係者)の概要とそれぞれの要素の関係についてお話ししました。今日からは個別の管理要素のお話をしていきます。

まずは要員管理です。前回お話ししたように、ここはPMBOKの第6版から資源管理に変わりました。もともとは人的資源管理を要員管理と表現していたのですが、人だけでなく、物的資源も含めて管理しようということから資源管理に変わりました。(ちなみに第6版ではタイムもスケジュールに表現が変わっています。)

とはいえ、今回は経営改善・業務改善の管理なので、要員管理を中心にお話をします。要員管理は前回概要で説明したように、どのような人を集めて、どのような担当に割り当てて、どのようなチームを構成するかを計画し、各メンバーの能力を活かすために教育やフォローを実施することでした。もちろん、この教育にはリーダー自身も含まれます。

メンバー集め

具体的には、まず、メンバー集めです。経営改善なら部長以上の管理職中心に社長がリーダーとなり、業務改善なら担当者等の実務者を中心に業務責任者(課長、部長)がリーダーとなるように人を集めます。集める際には、単に役職で決めるのではなく、改善に対するやる気や知識、年齢層ほか様々な点でバランスをとる必要があります。

IT化推進を行う時にITが得手な人ばかり集めるといざ実施というときに不得手な人がついていけなくなり、改善が失敗することがよくあります。かといって、とても不得手な人をメンバーに参加させるとその人の提案は改善を否定する方に向きがちな場合もあります。理想は不得手な人も気持ちにも配慮できる得手な人なのですが、次点として、少し不得手だが、やる気がある人をメンバーに加えるようにしましょう。ただし、不得手な人に対しては関係者として、ヒヤリングをきちんと実施することも改善を成功させるために必須だと思います。

役割分担

次に役割分担です。本格的に実施するならばRACIチャートを作成します。これはR(実行責任者;実際に実務を実行する人)、A(説明責任者:周りに説明をできる人。実務内容を承認する人でもある)、C(相談先)、I(報告先)をタスク(課題)ごとに割り当てていきます。相談先はいつもいるとは限りません。報告先はリーダーが担当することが基本になります。また、タスク1つにつき、実行責任者は複数いてもいいですが、説明責任者は1人です。

ちょっと、難しくみえるかもしれませんが、各業務改善の責任者であるAを1人決めて、その人だけでは改善が実施できない場合はさらに実務者であるRを増やす。全体を見て進捗を把握しているIがいて、進めるにあたってアドバイザーとなるCがいるということです。ポイントは改善責任者をAをきちんと決めることと全体把握をするIが全体の進捗把握を仕事として意識し、タスクごとのAと連携をするということです。

教育・訓練

次が教育です。業務改善の場合、意図的に若手をメンバーにすることがあります。これは業務改善を通して、仕事をよく深く知ってもらうことやついつい既存のやり方に引きずられるベテランとは違う意見を提供してもらうためです。しかし、この目的や意図をきちんと若手に説明せずに、必要な知識も与えずに改善メンバーとして参加しているケースをよく見かけます。これはリーダー側の認識・知識不足が原因の場合もあります。なので、それらを踏まえて、教育や訓練を実施することを改善活動の中に組み込んでおく必要があります。

例えば、原価改善をするならば、事前に基本的な原価管理教育を実施したうえで、現状の自社の原価管理状況を説明してから、改善の実施を行います。もちろん、途中でも不足している知識や経験を補足説明することも重要です。

管理・フォロー

最後にフォローを含めて管理をしていきます。メンバー同士の相性や体調・精神状態の把握、担当している改善内容と本人の能力との差異把握を行い、メンバーがその能力・知識・経験を最大限発揮できるようにフォローすることです。基本的にはリーダーのお仕事ですが、業務改善の場合は、リーダー自身も若手で十分にフォローができない場合もあるので、より上位の人やベテランにフォローの部分をお願いすることもあります。これがRACIでのCの相談先にあたります。経営改善の場合は外部の専門家にお願いすることも視野に入れてください。

要員管理は人手不足の中小企業において、経営改善・業務改善を実施する際に一番頭を悩ませるところですが、だからこそ、役割分担やフォロー体制をしっかり考えておきたいですね。

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