経営改善と業務改善(その14)

今回も経営改善と業務改善についてお話します。

前回は大事3つ要素である目標(スコープ)、納期(タイム)、原価(コスト)のバランスについてお話ししました。今回は改善活動を円滑に進めるための業務基準や業務分掌(役割分担)の見直しについてお話しします。

以前にもお話ししましたが、一昔前には、改善活動は勤務外に自主的に行うものといった風潮がありましたが、過労死の裁判やサービス残業の訴訟により、自由参加でないものはもちろん、査定に響くなど強制力が高い活動は勤務時間として取り扱うことが一般的になっています。

当然、残業時間に行うことになると時間外労働の割増率25%が増えます。休日だと35%になります。改善活動でコストダウンを目指すのに、コストアップの労務費を払うのは本末転倒のような気がします。できるだけ所定労働時間内で活動できる工夫が必要になるのはいうまでもありません。

そのために必要なこととして、業務基準の見直しがあります。改善活動を業務の一部として社内で明確に示すためには業務基準に明示できることが一番です。基準そのものを変更しなくても、改善活動が業務の一環であると明示した文章を社員全員に周知できればOKだと思います。もちろん、そのためにどのように時間をとってよいのかがわかるようにするのが望ましいです。具体的には週に1回1時間とか、月に任意回数で合計4時間といった表現があるとわかりやすいと思います。

理想は先ほど述べたように所定労働時間内に時間を確保することですが、その分、所定労働時間内での通常業務時間は減ります。この減らす時間が最初の改善活動で生み出す時間だと思います。改善開始直後は残業時に改善活動をしておき、改善の結果、その時間を確保してから、改善活動を所定労働時間内に入れていけばいいと思います。

ただし、この時間を改善時間と銘打つと改善以外が行いにくくなります。社員が改善活動に関与しない場合でも資格取得の勉強や研修・訓練時間に利用できるといったある程度内容に幅を持たせることができれば、より改善活動が強化されるのではないでしょうか。

とはいっても、何でもできる時間ではなく、あくまで会社の生産性向上にかかわるものに限定することや上司・関係社員への周知のために最低でも週間予定できれば月間予定で利用時間を明示できるような仕組みが必要になります。このような時間の利用について、基準として明文化しておくと改善活動が行いやすいと考えます。

同様に中小企業で改善活動でネックになることとして、属人性の高い仕事に拘束されている人の改善時間確保です。業務の属人化の解消は改善活動のテーマとして、よく挙げられることなのですが、その対象人物がそもそも活動に参加できないことが少なくありません。結果として、思ったより改善が進まなかったり、成果が小さかったりすることになります。

このネックを取り除く最初の一歩が業務分掌(役割分担)の見直しです。属人性の高い仕事には必ず複数の担当をつけて、まずはその仕事の中身を他の人にもわかるようにするとともに、主担当である人が副担当に仕事を任せることで生産性は一時的に低下しても改善時間を確保できる仕組みを作ることが望ましいです。

「とはいっても社員数に限度があって、複数担当なんて無理」って言われる方もいらっしゃると思いますが、それこそ最初に言った改善活動や教育・訓練に費やせる時間を利用して、その時間を属人性の高い仕事への勉強に費やしてもらうのです。こうすることで一時的に主担当の人が短い時間でも外せることを可能になります。

理想としてはどの仕事でも必ず、主担当・副担当がいるようになれば、属人化はかなり解消されるはずです。とはいえ、人には得手不得手があり、専門性の高い仕事は属人性の高い仕事になりやすく副担当はつきにくいでしょう。なので、できるところは少しずつ初めて、属人性の高い仕事を社内で最小限にするようにしましょう。そのために必要な業務分掌(役割分担)の見直しが改善活動のカギになると思います。

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