前回に引き続き、経営改善と業務改善についてお話します。
前回は経営改善と業務改善の連動について、バランススコアカードの戦略マップを利用する方法についてお話をしました。財務の視点、顧客の視点、業務手順の視点、学習と成長の視点の4つの視点で対策や目標をマッピングして、関係性を確認しながら、不足している対策や流れがおかしいところを確認して、経営改善と業務改善を連動させるというものです。
今回はその内容をもう少し掘り下げていきます。具体的には各対策の成果をどのように評価していくか、それによって、目標がどのように達成されるかという部分の仕組みづくりです。
前回もIT利活用による業務情報の見える化が必要とのお話をしましたが、具体的にどのような業務情報が見たら、対策が成功しており、目標を達成するのかを分かるようにする必要があります。
これは以前「業務改善のはかりかた」という記事でも紹介しましたが、計測可能な指標を設定するという方法です。
まずは、上位の目標に対して、CSF(重要成功要因)を考えます。これを行えばいけるという実施策です。ほぼ、下位の対策がこれにあたると思いますので、戦略マップを作っている場合はその対策を選ぶだけでOKです。戦略マップで記載する関係線が不足していたり、もう少し具体的にしたほうがわかりやすい時もあるので、その点は留意してください。
次にその目標の達成基準を考えます。これをKGI(重要結果指標もしくは重要目標達成指標)と呼びます。利益ならば利益額とか、利益率とかです。他社と比較したい場合はROAとかROEといった指標もありますが、社員がイメージしづらいと思うので、社員1人当たりとかにすることをお勧めします。これらの業界における平均的な指標は中小企業庁が毎年実施している中小企業実態基本調査にある数値を使うか税理士さんが所有する経営指標を参考にしましょう。
利益を出すためには売上拡大か費用縮小もしくはその両方となります。これらにもKGIがあるとわかりやすいですよね。さて、ではこれを実際に業務に当てはめるにはどうすればいいのかというと今度は対策の内容になるので、新規顧客獲得や既存顧客の売上拡大もしくは既存顧客の見積額UPによる利益拡大といった対策になります。
そこで登場するのがKPI(重要実行評価指標もしくは重要業績評価指標)です。新規顧客ならば、顧客数、既存顧客ならば顧客別売上高といった感じです。財務指標は企業によっては自社でできないことがあるため、年に1回とか数カ月に1回といったことになってしまいます。それでは、対策がうまくいっているかどうか途中経過がわからないので困ります。そこで、顧客数や売上高など自分たちで集計できる指標をつくります。これがKPIです。必要な売上高の年間目標を月間や四半期に分割します。建設業の場合は繁忙期と閑散期の考慮をしないと現実的でない指標になるので注意してください。
これをさらに顧客別に分けることで具体的な指標になります。顧客別に分ける理由は顧客によって、1工事の受注金額の大きさが異なり、ここからさらに指標となる受注件数を出しにくくなるからです。もちろん、すべての顧客に無理矢理指標を作るのではなく、得意先に限定したり、金額のバラツキがすくない顧客を対象にしたりと計測しやすさを意識してください。
また、上記に記述したようにKPIは下位の対策のKGIでもあります。全体売上 ⇒ 特定の顧客売上 ⇒ 特定の顧客の受注数といった感じで少しずつ小さくしていくことで、部署単位や社員単位で達成しやすい内容にしていきます。いくつも対策があるときは部署単位もしくは個人単位では全部を対象にせずに3つ程度に絞り込むのも大切です。ありすぎて、対策が実施できないのは本末転倒です。各自の役割分担を明確にして、多少の重複はしてもいいですが、決定した対策への漏れがないようにして、個々の指標を決定していきます。
実際に指標管理を紙ベースでやるのは非常に大変ですので、ここでもITを活用して、自動集計ができるようにしましょう。エクセルベースでも結構できますし、必要ならばBIの導入も検討してみるといいかもしれません。
慣れないうちは各部署もしくは個人1つずつで始めてもらってもいいです。まずは社内に経営改善と業務改善を数値的につながる姿を見てもらうことが優先しましょう。自分の目標達成が会社の目標達成につながっているとわかるのは意外と気持ちいいものだと思います。