今回も経営改善と業務改善についてお話します。
前回は管理6要素(品質、要員、コミュニケーション、リスク、調達、関係者)のうち、要員管理についてお話ししました。今日は関係者管理についてお話します。
関係者(ステークホルダー)とは
関係者とは、以前お話ししたようにメンバーではないが、経営改善、業務改善に影響を与えるもしくは与えられる人たちのことです。ステークホルダー(利害関係者)と呼びます。利害と書かれているように得をする人もいれば、損をする人もいます。
特に損をする人を適切に管理しないと改善がうまくいかなくなるのは言うまでもありません。前回も例に出しましたが、ITを利用した業務改善を行う際にそういう機器やソフトの操作が苦手な人やIT導入によって、仕事が大幅に変わる人、もしくは仕事そのものがなくなる人には特に配慮が必要です。
関係者管理(ステークホルダーマネジメント)
このステークホルダーマネジメント(利害関係者管理)は2012年のPMBOK第5版からコミュニケーションマネジメントの中から独立したものです。それだけ、関係者の重要性が増したということです。
関係者の洗い出し
では、まず最初に行うことはどのような関係者がいるかを洗い出すステークホルダーの特定という作業から始まります。以前お話ししたように比較的社内が中心の業務改善の場合は改善対象の業務を行う社員が中心ですが、経営改善の場合は、発注者だったり、協力業者のような外部の方も含まれます。
また、内部の業務改善といっても、注文書・注文請書や納品書、請求書の電子化といった場合は、できれば、受け取る側である発注者や協力業者も巻き込めると効果が大きくなるため、改善範囲をどこまでにするか次第で、関係者は外部も含まれます。
工程改善の場合、最低でもその工程に携わる作業者が関係者になりますが、生産性向上によるボトルネックの改善といった場合、上流工程や下流工程にも影響が出ることが多いので、その関係者も対象にする必要があります。例えば、鉄筋組立がロボット等で省力化されたら当然、時間短縮が図れるので、後工程の型枠組立にも影響するといった感じです。
工事現場の場合、単に工事に関わる人や発注者だけでなく、現場付近の住民の方やその周辺を通行する学生や会社員も関係者としてとらえる必要があります。工事車両は小さいお子さんやお年寄りには脅威に感じるものです。図書館、公園などの公共施設がある場合はより広範囲に影響を考える必要があります。
関係者管理の計画と実施
次に、関係者にどのように関わってもらうかです。臨時メンバーとして参加してもらうとか、アンケートやヒヤリングといった形で間接的に関わってもらうとか、関係者への情報提供で認識だけしてもらうといった形で関与のレベルを決めていきます。また、関係者同士での情報提供・確認の優先順位や情報提供の量等についても基本的な方針は立てておきます。
次は、実際のコミュニケーションです。この辺りは次回紹介するコミュニケーションと被っている点もありますが、適切な関与をしてもらうことで、納得感や安心感を得てもらうための管理が必要になります。
状況によっては、雑談のような非公式の会話といった形で情報提供をすることも意識する必要があります。
最後に全体的な関係者管理を行っていきます。経営改善、業務改善の進捗状況や内容によって、関係者の関与度合いや関係者そのものが変化します。適切なタイミングで適切な関係者との関与ができるようにして、改善の進捗に影響を与えないようにすることが大切です。
定期的にまとめて情報をプロジェクト会議に提供することで、メンバー以外の関与具合を共有することも重要です。相手がもっている情報を知らずに、行動を行うことは時には余分な摩擦を発生する可能性があるからです。
社会貢献が重要視される昨今、関係者管理はこれからも重要度が高いと思います。