前回に引き続き、会社でのスマホの利活用についてお話します。
前回、会社でのスマホ利活用で重要なポイントとなるセキュリティ対策について、お話をしました。基本的には専用ツールを使うことになりますが、利用の範囲を決めることや社員教育等を決めることも対策の一つです。
今回は、セキュリティ対策も含めて、会社におけるモバイル戦略についてお話します。
モバイルワーク戦略の目的と範囲
一般的にモバイル戦略というとスマホやタブレットを介して自社のサービスを利用していただくことやモバイル広告による自社の認知度向上といった顧客目線の戦略策定が多いです。今回は自社の社員に対してなので、モバイルワーク戦略といったほうが正しいかもしれませんね。
まずは、目的を明確にします。無駄な移動時間を減らし、直行直帰を可能にするためとか、テレワークの実現といった働き方改革の視点やお客様の問い合わせに事務所や本社を経由することなく必要な情報を入手できるとかいった業務効率化の視点、災害時や緊急時における情報網の確立といった事業継続計画の視点といったものが主なものだと思います。
もちろん、これらをすべて網羅してもいいのですが、できれば、優先度の高いものから考えて徐々に目的をレベルアップしていくほうが戦略は立てやすいです。
また、モバイルの範囲も重要です。一番はスマホだとは思いますが、情報量の多い図面・書類等を見る際や複数の項目を一度に入れるのであればタブレットも入れる必要がありますし、最近はソーラーパネルで動くSIM入りのネットワークカメラやスマートウォッチのようなウェアラブル端末も念頭に置く必要があると思います。
今回はスマホのモバイルワークに限定し、会社スマホ、個人スマホの業務利用で考えてください。
モバイルの業務での利用範囲と時間
次に利用範囲・時間を決めます。業務時間中のWeb閲覧や連絡先の利用範囲を限定し、業務に不要なサイトを閲覧しないようにすることや私的な電話利用を行わないといった基準を決めます。個人スマホを業務でそのまま利用する際はこれは難しいのであくまで、会社スマホが会社SIMがある場合に限ります。
利用時間は特につながらない権利が話題となっている昨今、客先からの電話に出なくていい時間を定義したり、緊急連絡以外は対応しなくていいといった基準も決めたほうが望ましいです。建設業の場合、土日祝日も仕事や24時間3交代制といったケースも少なくないので、職員の勤務日と連動させるといった配慮が必要です。
これらをモバイル利用方針としてまとめておき、比較的容易なもの(平日昼間勤務)から徐々に難易度の高いもの(休日夜間勤務)へと展開していくようにしていくことで、浸透しやすいステップを考えましょう。
働き方改革との連動も重要なので、今までは必ず事務所経由での出勤退勤だったのであれば、それを直行直帰にするために何をできるようにしなければならないかを考えましょう。
朝礼や日報だけであれば、ビデオ会議での参加や日報アプリで対応できますが、紙のタイムカードによる出退勤記録が必要であれば、それらもモバイルで対応できるようにする業務基準の変更が必要です。難しければ、直行だけ、直帰だけとどちらから始めるのもいいと思います。
社員教育と段階的導入のための戦略策定
社員教育も重要です。操作教育もそうですが、前回お話したセキュリティ対策は社員が適切に操作することが最重要ポイントです。怪しいメール、サイトは閲覧しない。信頼できないアプリはインストールしないといった当たり前ですが、意識しないとついやってしまう禁止事項をまとめて教育しましょう。
これらは段階的に行うと複数年かかります。一年目は業務基準の改定から初めて、教育準備や特定部署での試行、二年目はモバイルワーク基準の策定と教育実施、対象者の拡大、直帰の実現、三年目は情報共有や出退勤アプリ導入による直行直帰の確立といった感じで戦略をまとめてください。