引き続き、パソコンの選び方を紹介します。今回はタブレットやスマホ等で質問の多い、防塵、防水等のお話しをします。
昔はパソコンは割と清潔感の高い事務所で利用されることが多かったのですが、最近は気軽に外に持ち出して使っていることが増えてきました。タブレットもWiFiのみのものは室内中心ですが、SIMの使えるタイプは外でも使います。スマホについてはもちろん外での利用が前提です。
このような使い方で気になるのが防塵や防水に対する規格です。スマホもちょっと前までは雨でずぶぬれになったり、思わず水たまりや洗面器の中に落としたりといった状態ですぐにダメになっていました。(iPhoneなら6まではすぐにダメになりました。)
iPhone7からは防水防塵を正式に対応することになり、このために買い替えた人もいました。この時の規格表示がIP67というものです。このIPコードについて少し説明をします。
IPとはIngress Protectionの略で侵入への保護という意味です。IEC(国際電気標準会議)が策定した国際規格です。(JISはC0920です)2桁ある数字の最初が第一特性数字といって外形固形物いわゆる粉塵に対する保護等級です。数字の2つ目が第二特性数字といって水に対する保護等級です。一方しか確認が取れていない場合はIPX7とかIP6Xとかいった感じで確認が取れていないほうをXで表します。
各等級の内容を紹介するとまず、防塵が6段階で
IP1X:直径50mm以上の固形物(手)が中に入らない
IP2X:直径12.5mm以上の固形物(指)が中に入らない
IP3X:直径2.5mm以上の固形物(工具先端)が中に入らない
IP4X:直径1mm以上の固形物(ワイヤー)が中に入らない
IP5X:有害な影響が発生するほどの粉塵が中に入らない
IP6X:粉塵が中に入らない
※IP5Xは防塵形、IP6Xは耐塵形とも呼ぶ
となります。防水は8段階あり
IPX1:垂直に落ちてくる水滴での有害な影響がない
IPX2:垂直から15度の範囲で落ちてくる水滴での有害な影響がない
IPX3:垂直から60度の範囲で落ちてくる水滴での有害な影響がない
IPX4:あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない
IPX5:あらゆる方向からの噴流水による有害な影響がない
IPX6:あらゆる方向からの強い噴流水による有害な影響がない
IPX7:一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水がない
IPX8:継続的に水没しても内部に浸水することがない
※上から防滴I形、防滴II形、防雨形、防まつ形、防噴流形、耐水形、防浸形、水中形とも呼ぶ
となります。あとはこの組み合わせになるのですが、噴流と浸水は別の試験になることからIPX5/IPX7といった表現になる場合もあります。
この2つが高いレベルであれば、防塵防水は安心かというとそうでもありません。水は真水なので塩水への影響は考慮されていませんから、海水浴で絶対安心とは言えませんし、常温での試験なので、お風呂のように高温やシャンプー・石けん水の影響も無視はできません。もちろん、メーカー側も海での使用は大丈夫ですといった記述としていることもあるのでよく確認してください。例えばApple Watch は海は大丈夫だけど浅い水深にしてくださいとか石けん水やシャンプー、香水等はやめてくださいと書いてあります。
パソコンでも防塵防水のものはありますが、キーボードの部分がやはりネックになるのかどうしても高価になりがちです。タブレット型PCは割と増えてきているので、どうしても必要な場合はタブレット型をお勧めしています。
最後に防塵防水と同様に求められることがあるのが耐衝撃です。よくある例だと落としたりしても壊れないというものです。
残念ながら、パソコンやスマホに対する国際規格は見当たりませんでしたが、比較的よく使われている規格はMIL規格と呼ばれるアメリカ国防省の標準です。(時計は耐衝撃規定はJIS B7027)
MIL-STDが国防省標準でその中のMIL-STD-810が器材に対する環境耐性を決定するための試験方法が規定されています。
この中には、低圧、高温、低音、温度衝撃、降雨、湿度、塩水噴霧、砂塵といった様々な試験があり、その中で振動、衝撃・落下の試験があります。最新の規格はMIL-STD-810リビジョンH(2019.2)ですが、2008.10発行のリビジョンGを使っていることが多いです。
振動なら輸送時や作業時のヘリコプター、地面などといった環境の組み合わせがあり、衝撃は衝撃波を与えるもの、落下試験は重量で分けられたいろいろな角度からの試験があります。耐衝撃をうたっているものでも全部をやっているのではなく、この中の落下試験のみをやっている場合もあるので注意してください。